かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ダイアナの選択』 The Life Before Her Eyes
2009年 04月 08日 |
詩的に魅惑的。花の命は短し。翼の角度を間違えずに飛び立とう。

コネチカット州郊外の小さな町。高校で銃乱射事件が起き、その時ダイアナは親友のモーリーンとトイレにいたが・・・。



原作は、ローラ・カジシュキーの「春に葬られた光」

銃乱射事件が起こるサスペンスなアメリカ映画にはあまり惹かれるものがなかったのだけど、どうやら事件性や謎解きうんぬんではなくて、内面的なものが描かれていて、映像が美しくて語り口や雰囲気に魅力がある作品らしいと知ったので、迷った末に観に行ってみた。これは、映画館で観られてよかったなぁ。心掴まれる私好みの映画でした。出来事として直接映し出されるのは日常なんだけど、主人公の内面の抽象的なものが描写されていると感じられる、幻想的ですらある詩的な雰囲気がとてもいいの。オープニングの花のショットの美しさ(メイプル・ソープの写真を思い出した)に見惚れて、すっかりその世界に引き込まれちゃった。物語のオチには、最初から予想がついちゃうところもあるんだけど、確信をもったわけではないし、そんなことは重要ではなかったのだ。

『サーティーン』しかり、エヴァン・レイチェル・ウッドのちょっとビッチなティーンエイジャーキャラってリアルに活き活きしていて魅力的なんだよね。田舎町の暮らしにうんざりして背伸びしちゃう小生意気な女子高生の生態、でもその心は複雑にセンシティヴに揺れ動いているっていう感じが瑞々しくてよいのだ。『ゴーストワールド』的な仲良し二人組の女の子の戯れ模様がそもそも好きな私(『セリーヌとジュリーは舟でゆく』は最高。『ひなぎく』はサイコー)は、ダイアナとモーリーンの多感な女子高生青春ものパートだけで充分に気に入っちゃった。銃乱射事件と青春模様ということで、ガス・ヴァン・サントの『エレファント』を思い出さずにはいられなかったのだけど、同じようなリリカルな繊細さにキューン。儚さがたまらない。

17歳と32歳のダイアナの日常が交互に描かれ、ドラマの核心が何なのかが曖昧なままにミステリアスな空気に包みこまれるの。徐々にそれぞれの時代のダイアナの暮らしやその思いが見えてきて、17歳の時の出来事が32歳のダイアナのトラウマになっているということに心が痛むの。痛々しいトラウマ・ドラマな側面もへヴィーだった。具体的なことが明らかになっていくというわけではないのに、ダイアナの毎日が描写されるごとに彼女に心寄り添っていき、不明瞭なもどかしさの中で、映画にとらわれてしまう。銃乱射事件はどう展開し、ダイアナはどう選択するのかという瞬間が明らかになることへの興味は常に保持されつつ、もっと自由に、人生/生について思考させられちゃう浮遊する感覚がよかったな。編集にかなり時間がかかったそうだけど、このシークエンス、ジワジワとくる紡ぎ方は絶妙だったなって。

17歳の時にはいつも学校から呼び出しをくらって母親を困らせていたダイアナが、いざ自身が親になってみると同じように娘に手こずらされるという反復が面白いなぁと思ったんだけど、それは遺伝的に似たのではなくて、そういうことだったのね。フローズンヨーグルトって、十数年前は私も喜んで食べに行ってたものの、32歳のダイアナの娘が今も普通にそれを食べていることが不思議に思えたのだけど、そういうことだったのね。と後から顧みて、微妙な違和感を解決する面白みもあったり。でもやっぱり、謎解きについては付随的なものという感じ。サスペンスな演出に惹きつけられながら、ダイアナの青春と心の旅の浮遊体験をすることこそが醍醐味。儚い生のきらめきがせつなくて。
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by CaeRu_noix | 2009-04-08 10:58 | CINEMAレヴュー | Comments(6)
Commented by Nyaggy at 2009-04-08 13:41 x
かえるさん、こんにちは。
良かったですよね~。
描かれている少女の様子は日常的な何気ないことなのに、
幻想的で夢のようでもあって。私も、すごーく好みの作品でした。

編集もナイスでしたね。やっぱり時間がかかったのかぁ。
17歳の少女の繊細で瑞々しい感性に魅了され、32歳のダイアナは
理想の生活を送っているように見えて痛々しく、そして最後には
いつも銃乱射の画面へ繋がっていく…この緊張感の持たせ方が
上手かったなぁと思います。

『セリーヌとジュリーは舟でゆく』も『ひなぎく』も未見ですが、
面白そうですね。『ひなぎく』は古いチェコ映画なんですねー。
レンタルには無さそうかなぁ…。
Commented by ぺろんぱ at 2009-04-08 20:35 x
こんばんは。

かえるさんのレヴューが素晴らしくて嬉しい!です。

>ダイアナの青春と心の旅の浮遊体験をすることこそが

そうなのですよね、そこなのですよね、本作の魅力。
「浮遊感」というご表現に一人で思わず膝を打っていた私です。
こういうふうに表現されるかえるさんを、素直に素敵だなと思っている
私です。

ユマ・サーマンのダイアナが中心かと思いきや17歳のダイアナの
青春模様も大切に大切に描かれていて、これって幾つものジャンルに
属しつつ、且つどのジャンルをも超越した不思議な作品だなと感じました。
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-09 01:41
Nyaggy さん♪
ずっと前にこの映画のポスターを初めて観た時にはこれは観なくていいかなぁって思ったのだけれど、思いのほかよかったですー。
この監督の前作も結構よかったし。
アメリカ映画だと思って、敬遠してはいけませんよね。
ウクライナ・キエフ生まれのこの監督の感性は信用できるって感じ。
幻想的で詩的、夢のシーンみたいに描写されているのがよかったですよねー。
インタビュー記事をちらりと読んだのですが、編集に1年かかったって書いてありました。
撮影期間は一ヶ月くらいだったらしいのに。
時間がかかっただけのことはあって、絶妙な構成でしたよね。
何度も登場するシーンがまた意味深に心に残り。

『セリーヌとジュリーは舟でゆく』も『ひなぎく』は女子2人が主人公の物語というだけで、ここで引き合いに出すのは本当はかなりズレているのです。ごめんなさい。
本作とは関係ないけど、ガーリームービーとして、すんごく楽しくてラブリーなので、機会ありましたらご覧くださいー。
女子2人の悪ノリハチャメチャな戯れが描かれていますー。
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-10 07:21
ぺろんぱ さん♪
世間一般的にはサスペンス好きな人が多くて、オチが重要視される傾向にあるみたいなんですが、私はミステリーより純文学好きだったりするので、謎解きそのものよりも、テツガク的なてーまの方に心打たれちゃうんですよね。

その幻想性は、浮遊感すら感じられましたよね。
この言葉は私結構頻繁に使っている感じですー。

そうそう、ポスターを見た時は、主人公はウマちゃんなのねって思ってました。
エヴァンが出演していることさえ知らなかったんだけど、意外と17歳のダイアナがメインという感じでもあって、青春ものな要素が色濃かったところがよかったですー。
素材の一つ一つは目新しくもないのに、こういうスタイルの映画は斬新ですよね。
私も不思議さに惹かれましたー。
Commented by mezzotint at 2009-05-30 10:42 x
かえるさん
ラストがあのようになるとは驚きでした。
それまでに謎解きとなる場面が出てきていたこと
を思いだして、なるほどこういうことだったのだと
思ったようなわけです。
Commented by CaeRu_noix at 2009-05-31 11:01
mezzotint さん♪
驚きのラストでしたかー。
私はなんとなく物語構成・オチについては予想がついていた部分もなきにしもあらずだったので、ラストに驚いたというよりも、そうかと確認したうえで、彼女の選択に感動するっていうのが強かったです。
私はいつも、ミステリー、サスペンス、謎解きについて重きを置かない方なんですよね。
だから、そういうことかーってその辻褄が合うことに納得は大いにしましたけど、本作のお気に入りポイントとしては映像表現の幻想的な美しさやティーンエイジャーの2人の青春模様のみずみずしさについてでした。
なんにせよ、心に残る映画でありました。
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