かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『フロスト×ニクソン』 
2009年 04月 10日 |
真のウォッチメン。

イギリスの人気テレビ司会者・デビッド・フロストはウォーターゲート事件で退いたニクソン元大統領へのインタビュー番組を企画する。



格闘技の試合を見るような目の離せないスリリングな面白さ。というか、スポーツ観戦やアクション映画鑑賞にそれほどのめり込めない体質の私としては、そういうものを観るよりもハラハラと楽しめたトーク・バトル。ロン・ハワードの仕事は手堅いね。政治的な題材でエンターテイメントな仕上がり。

本物のニクソン大統領がどんな人なのかはほとんど知らないのだけど、やっぱり悪名高い印象で、浮かぶのはアンソニー・ホプキンスの顔だったり。でも、このフランク・ランジェラの演じるニクソンは、器の大きさと人間味が感じられる魅力的な人物だったな。もちろんフロストを応援する立場でこの対戦を眺めているんだけど、威風堂々のニクソンの語りに圧倒されてしまうのだ。口八丁手八丁の悪徳政治家のポーズには騙されるもんかと思いつつも、こういう人こそアメリカ大統領の器を持った人だよなぁって感心。

本作のシノプシスを知った時に私が思い描いた光景は、機転のきく早口でトーク上手なTV司会者が対話の主導権を握って、ニクソンをやり込めていく姿だった。ところが実際のところは、ニクソンが断然優勢で、ガンガン攻めていくものと思っていたフロストは威圧され気味なんだよね。予想していたものと違ったおかげで、スリルも倍増。本当に最後に逆転勝利を得ることができるんだろうかと心配になってしまうような展開なのだった。

まったくもって格闘技の試合のごとく、リングに上がるのは対戦するプレイヤーの2人だけなんだけど、セコンドのように彼らを支えるそれぞれのブレーンがいて、チームプレイになっているところがまたいいんだよね。影の存在があってこそ、プレイヤーたちは表舞台で一般大衆の心を掴むことができるんだよね。そんなことにもしみじみと感心させられる彼らのブレーンに扮したケヴィン・ベーコンやマシュー・マクファディンの存在もとてもよかったな。補佐官ブレナンのニクソンへの忠誠心は感動的ですらあったし、フロストへの信頼を揺るがせないジョンの姿勢や追究に余念のないボブのジャーナリスト魂にも心打たれちゃったな。

そして、互いに利用し合う政治とメディアの関係というのは常に興味深くて、また改めてTVメディアの意義についても考えさせられるのだった。舞台劇としては、このくだりはどういうふうに演出されているのかな。映画では、ジョンの語りによって、事実を矮小化させる映像の魔力についてが印象的に取り上げられる。トークバトルそのものは、舞台演劇でも緊迫感いっぱいなんだろうけれど、フレーム内フレームによって、TVメディアの功罪についてストレートなインパクトで感じ入ることができるという点で、映画化の意義を実感。

人間の野心というものについても思いを馳せてしまう。失脚の危険をはらむ犯罪的行為に手を染めてまで、人はなぜ、富や名声、地位・権力を求めずにはいられないんだろうって、いつも考えても答えを見いだせずにいるのだけど、フロストとニクソンの姿を見たら、その答えの片鱗が見えたような気がしたり。正反対のようで、似ている部分もある2人の男の闘いは、実に面白かったな。人生に欠かせないものは目的かぁ。人気かぁ。
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by CaeRu_noix | 2009-04-10 07:15 | CINEMAレヴュー | Comments(6)
Commented by 哀生龍 at 2009-04-10 12:46 x
>政治的な題材でエンターテイメントな仕上がり。
政治や社会問題をメインに取り上げた作品は苦手な分野なのですが、こんな風な見せ方をしてくれると興味が湧いたうえに楽しく見ることが出来ました。
でも、マイケル・シーンが出ていなかったら見ていなかったと思います(^^ゞ そこら辺は、俳優中心に見る作品を選ぶゆえの弱点ですね。

>舞台劇としては、このくだりはどういうふうに演出されているのかな。
舞台ではどんな見せ方をしてくれるのか、哀生龍も好奇心が刺激されました。
英語さえ分かれば、日本で上演されれば、(キャストはこのオリジナル・キャストに限りますが 笑)絶対に舞台も見たいです!

>人生に欠かせないものは目的かぁ。人気かぁ。
しいて言えば(哀生龍の場合は)、人生に欠かせないのは“目的”。 “目的”を達成するための強い戦力になるのが“人気”。 かな・・・
“人気“”人望“”カリスマ性”が無いので、苦労してます(^^ゞ
Commented by Minita at 2009-04-10 12:49 x
かえるさん、こんにちは!
トークバトルはかなり見応えがあって、面白かったですよね。
私もフランク・ランジェラ演じるニクソンに魅了されてしまいました。
最後は、哀れで泣けちゃったな~。
実際は、歴代大統領の中でもブッシュと並ぶくらい不人気らしいですが、
この映画では実に魅力的な人物だと思えたんですよね。

>フレーム内フレームによって、TVメディアの功罪についてストレートな
>インパクトで感じ入ることができるという点で、映画化の意義を実感。

かえるさんのこの文章にいたく感じ入りました。本当にそのとおりですね。
いかにテレビの力は強大であるか、映画でなければそのインパクトは
伝わらなかったのではないかな~と思います。
政治家たちがTVメディアをいかにうまく使うかに労力とお金を注ぎ込むようになったのは、ニクソンの失脚がきっかけというのも頷けるな~と。

ちなみに、この映画の後に、「ウォッチメン」を見たのですが、あちらのニクソンはかなり悪役っぽかったですね(笑)
Commented by mezzotint at 2009-04-11 00:55 x
かえるさま
今晩は☆★またまたお邪魔致します。
ふたりのトークバトルについていけず、途中睡魔に襲われたという
情けない結果でした。ちょっと苦手なジャンルかもです。
ウォーターゲート事件の詳細、ニクソン大統領がこの事件で、
任期半ばで退いたということもほとんど知らず・・・・。
いつもながら勉強させてもらったという作品でした。
ケビン・ベーコンのお顔を久しぶりに見れて良かったです。
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-11 02:17
哀生龍 さん♪
面白かったですよねぇ。
TVメディアそのものがそもそもそういう性質なんでしょうけど、この映画もまたエンタメでありました。
マイケル・シーンはよかったですよねー。
イタリア製のビットモカシンが似合っちゃう男。
この人は翳りのある狼男なんかより、こういう人当たりのいい笑顔を見せる役の方がより似合う気がしますー。

本当は、映画はとにかくオリジナル作品が最高と思っている私なんですが、やたらめったら、原作がコミックなものだとか、小説だとか、戯曲だとかいうものばかりなので、とりあえず、映像化されることの意義や、媒体の違いによる演出、表現の違いについてを考えてしまうのです。
個人的には、観たい生舞台はダンスや音楽ありのものに限るって思っているんで、ただの演劇には好奇心がわかない私なんですけどね・・・。

本作の後に、「チャーリーの男子トイレ相談室」を観たのですけど、高校生チャーリーもまた友達や人気を得るために、手段を選ばないってな感じで、大人も結局高校生と同じような価値観で動いているのかなーって思えたりしたのでした。

カリスマ性がある人なんてめったにいないと思うけど、人望がないのは落ち込みますって・・・
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-11 02:28
Minita さん♪
見ごたえありましたよねー。
着地点はわかっているのに、ドキドキが持続。
フランク・ランジェラの存在感、素晴らしかったですよねー。
政治家らしい議論上手なんだけど、腹黒いって感じはしなくて。
敗北して、にじみ出る悲哀がまた魅力をもたらし。
本物のニクソンはやっぱりもうちょい悪人面というか、ランジェラ氏のように大らか穏やかな雰囲気じゃない感じ。
youtubeで番組の映像を見ましたが、こんなに人間的魅力を感じさせる語りではなかったです。(本物のフロストもこんなに愛嬌はなく、もっと普通に落ち着いて淡々としゃべってました。)
ロン・ハワードはこの当時ニクソンに投票したそうなので、擁護のためにこういうキャラにしたのかって、一瞬疑いましたが、オバマを応援してたらしいし、そういうんではないもよう。
映画とTVは、厳密にいえば全然違う効果のものなんでしょうけど、それを再現するにあたっては、舞台演劇でやるよりも断然映画が有効ですよねー。
番組視聴者の気持ちになって、映画体験できましたもんね。
そうか、これをきっかけに政治家のTVメディア戦略も過熱したんですねー
「ウォッチメン」のニクソンは魅力的じゃなかったですよねー
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-11 02:38
mezzotint さん♪
睡魔に襲われましたなんてもったいないですー。
私はアクション映画の戦いのシーンなんかの方が眠くなるタチですー。
ディベート映画、会話映画のトークシーンはかなり好きです。
この手の映画は予習してから観に行く方がいいかもしれませんね。
私もウォーターゲート事件のことをよく知っていたわけではないけれど、オリバー・ストーンの「ニクソン」を観た時に、要点を知ったような感じです。
アメリカの大統領にそれほど興味はないけど、とりあえずJFKとニクソンのことは、インプットせずにはいられない感じで。
デヴィッド・ボウイも歌っていたし。
ケヴィン・ベーコン、よかったですよねー。
私も映画館で観るのは久しぶりで、「秘密のかけら」以来かな。
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