かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ザ・バンク-堕ちた巨像-』 The International
2009年 04月 16日 |
嘘だらけの大人の社会、サリンジャー、つかまえて。

インターポール捜査官のサリンジャーは、国際メガバンクのIBBC銀行の不審な取引情報を掴み、捜査ためにベルリンを訪れていた。



トム・ティクヴァがそっち方面に行ってしまうのはとても寂しい。ティクヴァといえば、『ラン・ローラ・ラン』だもの。『ヘヴン』だもの。サスペンスなアクションものなんて題材的な好き度は期待できないものの、ティクヴァがどう撮るかっていうところには興味津々。そこはさすがトム・ティクヴァ。ロケ地の魅力をいっぱいに、スリリングな見ごたえあるアクションものに仕上がっておりました。

それにしても、その邦題はなんなんだ、まったく。いっそのこと、ザ・銀行にすればいいじゃん。原題の「The International」は、日本語だと汎用性があり過ぎる一般語になっていてキャッチーじゃないとは思うけど、ザ・バンクというのも少しもキャッチーではないし、だったら主題を誤って伝えかねない意味不明な邦題をつけるのはやめてほしい。それは「ザ・インターナショナル」ではあるけれど、バンクだったら、むしろ「ア・バンク」なんじゃないのかなぁ?巨が堕ちたというよりか、利欲が肥大化というか。馴染みあるインターナショナルという言葉を改めて考えさせられるの。「Global」という言葉もはびこっているけれど、この世界のシステムは「International」に成り立っているのだし。それでいて、そんな Internationalの壁をすり抜けるようと悪の企みもとめどなく、あの手この手で国境を越えて行くのね。国際社会のルールが正義の足かせになったりも・・。

The International な映画だからこそ、ティクヴァが撮る意義を感じるの。街の俯瞰ショットが大好きなんだもの。ベルリン、リヨン、ルクセンブルク、ミラノ、ニューヨーク、飛んでイスタンブールー。ボーンシリーズや007もそうだったように、次から次へと世界各国の街角で追走劇がダイナミックに展開する映画は珍しくないけど、ティクヴァな本作にはロケーションの魅力があふれていて、ビジュアル的にも満喫。ブルーモスクの真上からのショット撮ってくれちゃうのは他にいないでしょう。コーランが聴こえるモスクの商談を盗聴っていうのは面白かったなぁ。そう、コーランといい、鳥の羽ばたく音といい、音に対して細やかなところも好き。彼が担当した音楽は、定番のハリウッド・アクションものの盛り上げシーンで使われる過剰系とは一線を画していて、クールでよかった。あのピアノがすごく好き。

ビジュアルのこだわりの面白さMAXは、やはりNYのグッゲンハイム美術館の銃撃戦でしょう。冒頭のベルリンから、美術館の特定の絵画の前で待ち合わせて依頼をするっていうのがいいなって思っていたのだけど、映像作品の並ぶこの独特の美術館内でそんなに激しくやっちゃうのねってニヤリ。ルーブル等広くて普通に四角い構造の美術館では成り立たない、グッゲンハイムの中央に吹き抜けのあるらせん型の建物だからこその撃ち合いの構図がよいじゃない。ほんのさっきまで、敵の立場にあって追跡していた男が、第三の殺し屋に銃を向けられるやいなや、サリンジャー側で闘うっていうスリリングな展開に息をのみ。粉々に砕け散ったガラス破片に似た姿をした雪が舞い落ちてくる銃撃戦の後の静まり返った美術館がそこにあった。

今や世界規模で国家や大企業が利欲のために、特権を利用しながら、悪徳行為を推し進めているなんていうのは、題材的には目新しくはないのだけど、悪の手先である立場の東ドイツ出身アーミン・ミューラー=スタールがそのシステムについて語るシーンは印象的。良心や正義は揺るぎないものだとしても、いくらでも代わりが現れて補充される悪のシステムを思うと気が遠くなるよね。タフな捜査官だって、自らの命を危険に晒す意味さえ見失ってしまうだろう。枠の外に出ればできることはあっても、犠牲を払ったなりの成果が得られるのかどうかもわからないという現実にはやっぱり茫然。でも映画としては、そんなシビアな現実をもとことんクールに描ききっているのがとにかくよいのだ。イスタンブールでグラッツェ。


このIBBC銀行というのは、91年に破たんしたルクセンブルグ籍のBCCIがモデルになっているそうで。
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by CaeRu_noix | 2009-04-16 00:40 | CINEMAレヴュー | Comments(2)
Commented by 哀生龍 at 2009-04-16 06:07 x
>それにしても、その邦題はなんなんだ、まったく
あまり情報を入れないようにしていたので、てっきり銀行の内部告発物か何かだと、小規模な話を想像していました。
そうしたら、メガバンクの悪事を利用している側も大きな組織で・・・
邦題のイメージと大分違ってました(苦笑)

>ティクヴァな本作にはロケーションの魅力があふれていて、ビジュアル的にも満喫
ここら辺も哀生龍の弱点。
かえるさんの記事を読んで、ロケーションの魅力を殆ど感じ取れない自分がいることを知ってしまうことが多いんです。
どちらかと言うと、舞台があちこちに飛ぶと今どこにいるのか分からなくなって混乱してしまうことが多く・・・(汗)
でも美術館が使われていたのは嬉しかったです!
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-17 07:47
哀生龍 さん♪
ザ・バンクって、言葉としてヘン過ぎて、どんなストーリーの映画なのかということを想像さえもできなかったですわ。内容を勘違いするから以前に、絶対にセンスなさすぎなタイトルかと。

ロケーションの魅力を感じるというのは、自分が海外旅行好きだからというのもあるんですけど、そういうこととは別に風景が好きなんですよね。映像的には、街並みの俯瞰ショットなんかが大好きということもあり。その両面において、心躍らせてくれるんですよ。街を舞台にするならば主人公がストリートを移動するところをカメラにおさめる躍動感のあるものが好き。舞台劇では再現できないような空間使いこそに映画の魅力を感じるんです。
私は空間認識能力は乏しいので、アクション映画や戦争映画の銃撃戦シーンなんかで、追い追われ撃ち合う両者の位置関係がよくわからなくなることはありますよ。そういうのは監督と編集者の腕にかかっていると思うのですが、すごくわかりにくいものもありますよね。方向音痴な自分を痛感。
でも、そういうのとは別で、世界各国の街が出てくるものは、とにかく楽しくなりますわ。が、あんまり行ったり来たりするのは確かに混乱するかもしれませんね。
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