かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ミルク』 MILK
2009年 04月 23日 |
ガス・ヴァン・サントがこんなに温かいストレートにいい映画を撮るのは久しぶりだよね。

米国史上初のゲイを公言した政治家ハーヴィー・ミルクの半生。



人を飲み物に例えるとしたら、男ショーン・ペンはおよそミルクなタイプじゃないよね。そうね、バーボンかなぁ。それがこのオスカー俳優はいとも簡単に、正反対の物腰ともいえる、愛嬌いっぱいミルキー・マンになることができるのだ。私は、俳優としてじゃなくて映画監督としてのショーン・ペンが好きなんだってずっと思っていたんだけど、やっぱり俳優なショーンも大好きなのかもしれない。結局は人間としての魅力に惚れちゃっているんだけどね。課された役を職人的に演じるというだけなら、演技の巧さに感心はしても、それほどに心の奥深くまでは響かないと思うの。よくある伝記映画ならば、俳優の演技への注目点は、本人に似ているか、なりきっているかどうかがという程度のものだろう。ここでは、映画の意義をふまえて、政治的な使命感をもって本作の主演を務めている真剣な思い感じ取れるから、ミルクに扮するショーンのフレンドリーな笑顔にやけに心揺さぶられちゃうんだよね。

ガス・ヴァン・サントの作り出す映像世界は透明感があるから、どっしり存在感のある実力俳優を主演にするよりも、『エレファント』や『パラノイド・パーク』のように無名の新人を起用する方がふさわしいんじゃないかって、鑑賞する前には何となくそう思っていたのだけど、いやいや、このコラボは最高にステキじゃない。ガスの映画において、ショーンを取り巻き、若手俳優たちが競演しているという構図には心湧き立つの。明るい色のくるくるヘアのジェームズ・フランコは最高にチャーミングで、『バレエ・カンパニー』のステキさを越えたかも。誰が何の役で出ているかなんてあまり気にしていなかったのだけど、フランコもディエゴ・ルナもショーンの恋人役だなんて、俄然嬉しくなっちゃった。マイノリティの人権を守るっていう政治的な意味合いに心打たれる一方で、ショーンとジェームズ・フランコがゲイカップルのラブシーンにドキドキ萌え気味だったりして、硬くも柔らかくも多様に楽しめるのであった。

ショーンが体現したハーヴィー・ミルクという人物、その生き方はとても魅力的。彼の着実な闘い方もとても興味深くて、そのキャラクターに惹きこまれながら、アメリカの歴史の1ページ、このムーブメントを共に体験した気分。ゲイの仲間たちが集ったコミュニティの熱気は青春ものテイストで、政治的なテーマでも節々にガス・ヴァン・サントならではの味が感じられて嬉しい。ハーヴィとスコットの二人の時間がスイートでたまらなく印象的。部屋に戻れば優しい恋人の顔を持ち、外では差別と偏見に苦しむ全てのゲイの人々のために、マイノリティのために闘う勇敢な戦士のミルクは、そんじょそこらのストレートの男より男気に満ちている。こんなに素晴らしい人物が志半ばで命を奪われてしまったのは本当に無念だけど、彼は確実に、ゲイ、マイノリティの多くの人たちを救い、希望を与えたのだよね。車椅子の青年の電話のエピソードはよかったな。今だって、差別や偏見はなくなったわけじゃない。だからこそ、ミルクの信念を反芻し、社会と向き合っていかなくちゃね。政治家のミルクは逝ってしまったけれど、映画作家のガスはここにいる。
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by CaeRu_noix | 2009-04-23 23:59 | CINEMAレヴュー | Comments(10)
Commented by Minita at 2009-04-24 12:49 x
かえるさん、こんにちは~!
Harvey Milkについては、全く知識がなくて見たのですが、
一人の人間がこれほど大きなムーブメントを起こしたということに感動してしまいました。
ショーン・ペンは素晴らしかったですね。
ミルク氏ってとっても魅力的な人物だったのだな~ということがリアルに伝わってきましたもの。
そうそう、政治家としてかなりの手腕を発揮しバリバリやりながら、
プライベートでは年下の恋人にとっても優しかったりするところが、
なんとも素敵でしたね。
若手俳優も可愛い子が多く、気づけばかえるさんのお気に入りな俳優さんも~。
ジェームズ・フランコには、私も目がハートマークになってしまいました(笑)

そして、遅ればせながら4周年おめでとうございます!
かえるさんのレビューは、いっつも映画に対する愛が溢れていて素敵だな~と思います。
かえるさんがほめてらっしゃる映画は、必ず見たくなりますもん~。
おかげで、私の映画の世界も以前よりも拡がりつつあります!
これからも、ぜひぜひ続けてくださいね~。

Commented by CaeRu_noix at 2009-04-25 22:07
Minita さん♪
Milkって人名なのかーってことを知ったのだってそんなに前のことではなく、私も彼のことは全然知らなかったんですよ。
ホント、こんなにステキな人が70年代にがんばっていたなんて初めて知って、大いに心打たれました。
Minita さんが書かれていたことにもすごく同感で、本来は政治家になるべきなのはこういう人間なんですよね。
ショーンの今回の役どころ・演技はパーフェクトでした。
ミルク氏が政治家としても恋人としても頼りになる魅力的な人であったバランスのとれた人だったというのと同じく、ショーンの演技もシリアス一辺倒、コミカル一辺倒の役どころよりも確かなものになっていた気がします
このジェームズ・フランコはめちゃめちゃよかったですよねー。
『バレエ・カンパニー』『トリスタンとイゾルデ』でも胸キュンな存在だったんですが、今回は演技的にもノリにノッている感じで目が釘付けになっちゃいましたわ。

お祝いコメントもありがとうございます。
そんなふうにおっしゃっていただけて感激。
これからも素晴らしき映画との出会いを広げていきましょうねー。
機会ありましたら、Minita さん行きつけのおいしいお店にも連れて行ってもらいたいでーす♪
Commented by とらねこ at 2009-04-27 02:43 x
かえるさん、こんばんは♪
心揺すぶられましたー。ショーンの演技に本気で熱くなって、すっかりこのドラマにのめりこんでしまいました。
泣きましたね・・・。本当にハーヴィーが居なくなってしまったのが残念でならなくて。
自分は正直、ガス・ヴァン・サントは90年代の頃に追いかけていたのですが、あまり最近注意を払って見てなかったりしました。これまで一番好きだったのは『グッド・ウィル・ハンティング』だったりしましたが、これも二番目ぐらいに好きかもー。という作品になりました。『パラノイド・パーク』も見なくっちゃー。なんて思いました。『ラスト・デイズ』はカートが好きで、見れなそうなんですが。
Commented by 真紅 at 2009-04-27 15:21 x
かえるさん、こんにちは! コメントとTBをありがとうございました。
私、この映画めちゃめちゃよかったです・・・。数日後に観た『スラムドッグ』が霞むほど。
素敵なアクターがいっぱいで、撮影中はパラダイス気分だったでしょうね~、ガスったら・・・。
中でもジェームズ・フランコくんは最高でしたね。本気でハーヴィーを想っている感じでした。
今まで私もショーン・ペンって(俳優としては)あまり好きではなかったのですが、本作ではヤラれました。
『エレファント』観てないので早く観なくちゃです。。
ではでは、またです~。
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-27 23:01
とらねこ さん♪
泣けましたねー。
まるまるフィクションだとしてもエラくステキなお話であるのに、これが現実の出来事だなんて、無念さも感動もひとしおですよねー。
ハーヴィーにはもうちょっと長い間、がんばってほしかったですよねー。

『グッド・ウィル・ハンティング』はいい映画ですよねー。君は悪くないって、ロビン・ウィリアムズが言ってくれるところはめちゃめちゃ泣けましたー。
が、映画としては、ストレートなヒューマンドラマな仕上がりのそれらよりも、近頃の実験的ってな感じの作品群の方が好みの私なのですー。
『ジェリー』以降の作品が印象深いです。
あと、幻のデビュー作『マラノーチェ』もすんごく好きです♪
『ラスト・デイズ』は物語の中では主人公はカートじゃない架空の人物なんだけど、それでもダメかしらん?

そういえば、私がレンタルVIDEO屋に通うようになった時期はとらねこさんよりも大分遅いんだけど、初めて借りたのが『ドラッグストア・カウボーイ』でした。
マット・ディロンファンだったわけじゃなく、単なるジャケ借り、なんとなくフィーリング借りでしたが、今思うとちょっと誇らしいです。w
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-27 23:08
真紅 さん♪
めちゃめちゃよかったですよねー。
やー、私は『スラムドッグ』も素晴らしく好きなんですけれど、あちらはファンタジー色が感じられるから、大人の女性たちにはこちらの評価の方が高そうですね。
後から見た方が霞んでしまうとはー。
ガスったら、撮影中も幸せだったことでしょうね。(笑)
それで自己満足して終わりじゃなくて、こんなに世の人の心に響くすてきな映画ができちゃうのだから、素晴らしいことですよねー。
ジェームズ・フランコくんって、作品によってはさほど魅力的に見えない時もあったかと思うのですが、今回は監督の趣味も共演者の力も完璧で、実にいい演技を見せてくれましたよねー。
ショーンもそう、力み過ぎて鼻につく演技の時もあったりするんですが、今回はいい感じで、ごくごく自然に心に沁み入って「きましたよねー。
ガス作品は制覇しましょうー。って、『サイコ』は未見だけどー
Commented by minori at 2009-04-29 11:55 x
かえるさーん。ずいぶん遅れてしまいましたが4周年おめでとうございます!かえるさんの感想、いつも楽しみにしておりますので無理をしない程度にこれからもがんがん映画を見続けてくださいねー。

さてさてハーヴィ。私も知らなかったんですよね。彼の存在。映画によって新しい人を知るっていうのはホントいいことだといつも思うのですが(たとえば若かりしころのチェ・ゲバラとか、フリーダとかetc)彼のことも知ることができてよかった!と思える映画でした。もちろんショーンはすばらしくよかったのですが脇をかためたジェームズも、エミールもみんないい味だしてたと思いますー。

それにしても暗殺と隣り合わせにいる気分って、普通の人には想像すらできないですね。うーん。というわけで次はスラムドッグにお邪魔します(笑)
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-29 23:21
minori さん♪
ありがとうございますー。
これからも懲りずにガンガン観ますよんー。

そうなの、若かりし頃お勉強不足だった私は、映画を通じて世界の出来事や偉大な人物について知り得ることができて、一石二鳥。
本当いったら、皆が知るべき素晴らしい人物は世界各国に遍くいるはずなのに、どうしても映画製作事情や配給事情の関係で、アメリカ人の伝記的映画にお目にかかる比率が圧倒的に高いので、私はその点が不満でした。(オーストラリアにだって本当はいるでしょう?)
でもまぁ、そのお陰で、アメリカ人に限っては(他国のゲバラ、フリーダクラスのドラマティックな有名人でなくても)、より多様な人のことを知り得ることができて、それはそれでよいかなーとも思え。
というか、ミルクのことを知ることができてとてもよかったし、ガスがこの映画を作ってくれたことに感謝。

ミルクが銃弾に倒れることはわかっていたけど、私は誰に殺されたのか知らなかったんですよね。
てっきりゲイを嫌悪する愚かな一般人かなんかかと思ってまして。
そしたら、ちょっと事情が違っていて、これまた悔しいものでした。
Commented by 俄フェレリスタ at 2009-05-21 19:10 x
 こんばんは。今週、ようやく見ましたよ!! 色々考えさせる作品です。
 ゲイの他、マイノリティ(左利き、障害者、女性、有色人種、国における移民等)が今隠れずに暮らせるのは、各々にH. Milk的な人達がいて、動いたからでしょう。マイノリティを自覚し、彼らに感謝し、全うに振舞わねばならないなぁ、と、自戒をこめて見てました。権利ばかりで、マナーを弁えない等したら、Milk達が得た権利が失われますから。
 一方で、そのマイノリティが権利を主張する程、マジョリティが脅威を抱くもの。D. ホワイトがMilkを殺したのも、マジョリティとして脅威を抱いたからでしょう。
 「俺達の存在を認めてくれ。君達のあり方には干渉しないから、俺達にもとやかく言わないでくれ。」
 と、マジョリティに訴えかけ、マジョリティの権利やあり方への理解も示せばよかったのか…。下手な文ですみません。
Commented by CaeRu_noix at 2009-05-21 22:53
俄フェレリスタ さん♪
コメントありがとうございます。
多面的に考えさせられましたよねー。
ゲイのみならず、マイノリティの人々皆に希望を与えたことが素晴らしいですよね。
それはある意味一つの政治戦略でもあったのだろうけど、マイノリティの苦渋を知っていたミルクは本気で皆のことを考えていたんですよね。
自由の国アメリカは実は決して柔軟でもないんだってことを物心ついてから知りましたが、自由のアメリカをつくり出していたのはミルクのような人たちなんだなって。

ゲイへの差別、人種等への差別があるから、被差別者が差別者に抗うという図式ができたに過ぎないと思ったので、私は、マジョリティVSマイノリティという構図には着目しなかったんですが、選挙において対立項目は必要で、その意味ではマジョリティVSマイノリティだったんですよね。相手を打ち負かさなくては意味はないけれど、それほどに脅威を感じさせてはいけないというのは難しいですね。ホワイトの犯罪は、もはやゲイがどうのってことじゃなく人気者な成功者に対する嫉妬心の爆発みたいな感じに見えたかな。

あって当たり前と思わず、ミルク達が勝ち取ってくれた権利を守っていきたいものですよねー。
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