かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『重力ピエロ』
2009年 05月 28日 |
♪ピエロに涙は禁物さー T.



映画と小説、両方見たい時は映画が先に決まっている。だって、先に小説を読んでから映画を観たら、小説の方がいいと思うに決まっているんだもん。映画を最大限に楽しむためには、原作を先に読むのはわたし的にはご法度。な・の・に、映画化情報はまだ流れてなかったのか、去年これの原作小説を読んでしまったんだよね。面白かった。とても気に入った。それゆえに、映画との向き合い方がますます難しくなった。いっそのこと、映画は観ないという手もあった。でも、これはキャスティングが魅力的だしさ、どんなふうに映像化されたのかなーってことを自分の目で確かめてみたくなるの。

加瀬ちんと岡田将生くんが兄弟なんて素晴らしいじゃないですか。こんな兄弟の姿が目に見えて存在するってことこそが映画化の歓び。ストーリーを知ってしまっている自分はもはやミステリーな部分をめいっぱい楽しむことはできない。でも、その代わり、既に知っているからこそ、語られる前から感動が訪れたりもする。始まって、ものの3分で泣けてきたなぁ。だって、桜の花びらの中、春が2階から降ってくるんだよ。加瀬兄貴が驚いた顔をするんだよ。ジョーダンバットを差し出して、やっつけに行こうって言うんだよ。うーん、たまらん。

結局のところ、原作小説がとても素晴らしく面白くて感動的で、こんなにナイス・キャスティングをしてくれたわけだから、そこそこに評判いい映画がつくられるに決まっているわけだ。とりあえず、家族愛、兄弟愛に心揺さぶられずにはいられないしっかり感動作に仕上がっていたって感じ。原作を知らなければ、謎解きの部分もスリリングに楽しめるのかな?

小説の方は、春の出生の秘密は早くに明かされていて、犯人探しでずっと引っ張っていた印象があるんだけど、映画の方では、その告白がわりと後送りにされていて、むしろ家族の物語が謎のメインにおかれているような感じだった。つまり、ちょっとベタなヒューマンドラマっぽさが前面に出ていた気もしたな。小説ではもっと淡々とサラリと語られたことが、映画では、両親の物語や家族の思い出の多くが回想シーンとしてアリアリと映像で蘇っているから、お涙頂戴度が強くなっちゃうの。小日向父さんなんかはキャスティング自体があざといとすら思えてしまうほど。今の日本映画のスタンダードはこのくらいなのかなぁ。

「本当に深刻なことは陽気に伝えるべきなんだよ」って重要な台詞に、映画が従っていない気がしたのが引っ掛かった。いえ、陽気に伝えていないわけではないんだけど。原作小説がそういう深刻さをあえて、軽やかにサラリと伝えようとしているのに、映画の方は日本の感動ドラマ特有のウェットさを持ってしまっていた気がしたのだよね。感動の回想シーンの罪。そうやって、湿度が上がる分だけ、重力に囚われてしまった感じなんだよね。軽薄な印象になっても困るから、こんなものなんだろうけどさ。

完璧な原作なのだから、小細工はせずに堅実に作るのが無難なのだろうというのはわかるけど、個人的にはもうちょっと遊びのきいた映像表現をしてほしかったな。百歩譲っても、ピエロの空中ブランコシーンの普通さにはガッカリ。予告映像の一瞬のピエロはもっといい感じだったのにね。サーカスのピエロが空中ブランコで重力が忘れられるシーン、あそこだけはフェリーニ級にファンタジーを炸裂させてほしかったな。グラフィティアートにしても、ピカソの生まれ変わりの春が描く絵はそんなんじゃないよーって思っちゃったし。映像化の面白みについてはやや物足りず。まぁ。これは俳優を満喫する映画かな。

原作小説のコネタ・エピソード、台詞の数々は当然のことながら、多くが省かれていたけど、私の好きだったネアンデルタール人とクロマニョン人ネタがなかったのはとりわけ残念。あと、これは絶対省かれるってわかっていたけど、ジャン・リュック・ゴダールネタも跡形もなくて悲しかったなぁ。岡田くんファン層にはJLGネタなんて受けないに決まっているけどさぁ・・。つまり、芸術についての言及あれこれがカットされているんだ・・・。

映画もなかなかよかったんだけど、やっぱり伊坂幸太郎原作の味わいが忘れられないって感じ。
[PR]
by CaeRu_noix | 2009-05-28 23:59 | CINEMAレヴュー | Comments(11)
Commented by KLY at 2009-05-29 00:35 x
こんばんは~^^
原作は未読で観ました。というか伊坂さんの作品は読んだことなかったり。それでもなのか、それだからなのか、きっと両方あるんでしょうけど、今までの伊坂作品の映画化の中では一番良かったかなぁ。
中村監督との相性が最悪な私としては森監督に頑張ってもらいたいところだったりします。^^;

それにしても、家族の24年間という時間軸と現在進行形の事件がグラフィティーアートの場所で起こるっていう空間軸これの交差点があの家だったという構成の妙に惹かれました。もちろんキャスティングもですけど!
Commented by CaeRu_noix at 2009-05-29 01:09
KLY さん♪
原作未読でご覧になるのが正解です。^^
私は不正解で、先に原作を読んじゃった本作に関しては公平な評価ができない感じです。でも、そうですね、映画としてはよい出来だったと思います。私の理想通りの映像表現というんではなかったけど、それはやや理性的に考えたことであって、鑑賞中は概ね浸って楽しむことができました。

中村監督のことはよく知らないのですが、アヒルと鴨はとても面白かったように思います。フィッシュ・ストーリーも音楽の魅力もあって楽しめましたよー。私にとってはどちらも伊坂小説の映画化作品であって、監督の個性とその差異はわかっていない感じです。山下敦弘あたりが撮ってくれたら、その作家性で気に入ることができそうなのですが。

そうですね。伊坂氏の愛する仙台が、地図と照らし合わされながら、その空間がいきていたのが面白かったです。映画化されることで、時間と空間がより立体的に見えてきましたね。プロットの面白さが何よりも感じられたなら、本作は大成功っていうことですね。
Commented by しねまま at 2009-05-29 12:04 x
こちらにはお久しぶりです。原作読んでると映画観賞は迷う、よく分かります。

映画観賞後、原作読み終わりましたが、正直小説のほうが優れてる点も、映画のほうが優れてる点も、細かく挙げれば色々ありました。

でもね弱いんですよ、こういう男2人の兄弟ものとか相棒もの(決して友情ものとは言わない)。

ただ、映画観賞後に読んだ『フィッシュ・ストーリー』の収められた短編集、『ピエロ』、『アヒルと鴨』(まだ途中)の原作と比較すると、“ちょっとだけ地面から浮いているような軽妙さ”はどれも原作のほうが上ですね。文章(筆致)と映像の違い。これは難しいけど。

ただ、『重力ピエロ』は伊坂氏も言うように初期に書かれ、決氏の中では決して完成度の高い作品ではなく(秀作だけど)、存在そのもが魅力的な岡田くんも、芝居に関してはも加瀬くんに比べればまだまだで、不安定。でも加瀬くんの『岡田くんはそのデコボコ感を失さないでほしい』という名言のように、ちょっとデコボコしたこの作品と「春」が、かえって引っかかって不思議な魅力を出している気がしました。

ピエロの空中ブランコ・シーンの不満と、挙げられたコネタ見たい!~は、同感。
Commented by CaeRu_noix at 2009-05-30 00:41
しねまま さん♪
コメントありがとうございますー。
おおー、原作も読了されたのですねぇ。はやーい。
兄弟ものはいいですねぇ。といっても、デファイアンスなんかにはあまりのれなかったので私は無条件で好きってことではないんですが(ゴーストワールド・ヴァージン・スーサイズ系なら、女の子の相棒もの・姉妹ものもむしろ好きだし。)、このスプリング兄弟は、原作を読んだ時点でとても好きな存在だったから、加瀬&岡田兄弟にも否応なしに心つかまれました。
岡田キャスティングを知った時、全くイメージ通り!と思ったのですが、振り返ってみれば、小説の春は年齢設定が少し高いこともあり、もうちょっと思慮深さが感じられる人で、片や岡田春の方は直感で動いているタイプという感じに見えました。世界観・語り口としては、小説の方がサッパリ軽やかなんだけど、春の存在感自体は映画の方がフワリとしていたかなぁと。で、そこでバランスがとれたのかもしれません。というか、岡田くんの年齢と容姿(演技?)で小説のまんまの思考の人である春を体現するのはやや無理があるから、ありのままの岡田くんの魅力が感じられるこういう春が映画の主人公になったのは、むしろ大成功ですよね。
Commented by CaeRu_noix at 2009-05-30 00:55
長編小説を映画化する試みの全てがそもそも間違いだと、私は思っちゃう方なので(笑)、(オリジナル脚本推奨!小説を映像化したいなら、短編を膨らますに限りますよね?)どう転んでも絶賛することはできないながら、鑑賞時にはストーリーを承知の上で感動せずにはいられませんでした。魅力ある映画になっていたと思います。(芸術性うんぬんではなくて、商業的に大成功!っていう意味合いも強いのですが・・・) 劇場もほとんど満席で、大ヒット万歳ですねー。

クロマニョン人の話は本当に好きだったので、カットされたのは残念でしたが、盲目のミュージシャンの話の登場は嬉しかったです。ピエロにけちをつけているのは全国で私だけかもしれませんけどね。タイトルになっているんですから、大切なシーンですよね?
まぁ、とにかく、加瀬・岡田兄弟の存在がとってもよかったので、映画化の意義は大いにありましたねー。
Commented by cinema_61 at 2009-05-30 21:40 x
こんばんは。
すごく期待して観たけど・・・やはり原作とは別物だったような。
でも、映画はこれでもいいのかな?と思ったわ~
2人の主人公のキャスティングが良かったので私は満足です。
とくに加瀬くんの抑えた演技はいいなあ~
最後のほうで流す一筋の涙に・・・・・あっこれ贔屓目ですか?
子役の2人も絶妙!それにモデルだった母親似の春が岡田くんのようなイケメンなのも説得力あり。
渡辺さんの役もいい味だしてて・・・・・・・・・・
やはり、映画はキャスティングの良し悪しで決まるのですかね?
Commented by CaeRu_noix at 2009-05-31 11:24
cinema_61 さん♪
そうですねぇ。原作の味わいとは別ものなカンジでしたよねぇ。
でも、そうなんです。原作小説そのまんまを映画にすることなんて不可能なはずですし、逆にそれが簡単にできちゃったとしたら、小説の魅力・映画の魅力そのものが乏しいんじゃないかとさえ思えます。こんな感じの映画化こそがほどよい成功例なのかなーって思えますよね。
加瀬っちは本当にいいですよねー。私はこの後に続けて『インスタント沼』を観たので、加瀬二連発となりましたが、全く違うキャラクターを常に自分のものにしていることに、しみじみ感嘆しちゃいました。
岡田くんは京香さんには似ていないけど、そうか、イメケン度という意味では納得の母親似ですよねぇ。
子ども時代のイズミのメガネがダサ過ぎて、モデル上がりの母は絶対息子にそういうメガネを選ばないっしょーって思ったりしましたがー。w
キャスティングって、映画のとても重要なポイントですよねぇ。それが全てではないけれど、それが至らなければ台無しになってしまうという。必要条件ー
Commented by Sa at 2009-06-01 02:21 x
おお。かえるさん、そうなのよ
ネアンデルタール人とクロマニョン人ネタ
ジャン・リュック・ゴダールネタ
CM制作にちょっとつきあっただけの父さんの元へ突然おしかけた母さんネタ

無い…そんなあ なのでした。

伊坂幸太郎はもっと「からりと晴れた知性派なんだけど…自社評価

兄弟が話していたペットショップはきっと「アヒル鴨」の中で使われたあのペットショップではなかったのかと思ってみてました。
Commented by CaeRu_noix at 2009-06-02 00:53
Sa さん♪
お久しぶりでーす。
ネアンデルタール人とクロマニョン人ネタの省略は寂しかったですよねー。
クロマニョン人は芸術を愛するというくだりにはえらく感動をしたのですがー。
遺伝子という科学なアプローチをしながらも、同時に(というかそれに反するように?)芸術にまつわるあれこれの挿話がそれはステキでしたもんね。
ギャスパー・ノエの名前まで出てきていたことをカクニンー。

そうですね。伊坂こーたろーはもっと"からりと晴れた知性派"ですよね。
映像化しちゃった場合には、あんまりウンチクばかり並べるのはくーるじゃない感じだし、岡田春がそこまで博学なのはちょっと不釣り合いな気もするので、映画としてはこのくらいのネタ数がほどよかったのかもしれないけれど。
岡田くんの存在感にビジュアル的には満足しつつ、伊坂の頭脳・感性をもつ小説の春を求める自分もいました。

ああ、「アヒル鴨」のペットショップですねー、きっと。
それぞれの登場人物が街のどこかですれ違っているって感じが楽しいですね。
Commented by ぺろんぱ at 2009-06-08 20:41 x
こんばんは。

私も“重力に囚われちゃった”口です、きっと。^_^;
本作を鑑賞後、軽やかに語りたいのに軽やかには語れなかったです。
父親の「あの選択」にまで思いが及んでしまいました。
原作はどう導いてくれるのか、是非読んでみたいと思っています。

でもそんなこんなで、いまだにいろんなことを考えてしまうって事は、印象に残る作品だったといえるのかなぁとも思っています。

ピエロのシーン!
私もちょっぴり同じようなことを感じました。
あそこはやっぱり泉水と春にとって想い出としての大切なシーン。もっと詩的に且つ画的に印象深く強く描いて欲しかったなぁと思いました。

Commented by CaeRu_noix at 2009-06-09 00:33
ぺろんぱ さん♪
重力に囚われてしまいましたかー。
私は伊坂こうたろうの善悪に対する切り込み方はすごく面白いなぁと思っていて、どちらかといえば共鳴しちゃう感じなんですよね。
絶対悪というのがあるのかはわからないけど、法で定められているところの犯罪うんぬんではない深度の根源に近い部分の悪を憎むという思いに惹かれるのです。
そんな私は、この物語をスッと受け入れた感じなんですが、ぺろんぱさんが引っかかりを覚えたというのは、映画の話法がいたらなかったのか、そもそもの伊坂的な善悪のアプローチとぺろんぱさんの倫理道徳観が相容れないものなのかー?
私は、戦争だとか組織VS組織の報復合戦にはまるで正当性を感じないんですけど、個人的な強い思いを軸に悪に立ち向かうという構図なら、いえ復讐だって、フィクションとしてはOKなんですよ。
世の中のすべての理不尽な死がなくなるなら、その死にも慎重に向き合いたいところだけど、残念ながら世界はそうではないのだから、ならば悪人から死すべきだ!的な。。
って、ちいとも正論じゃないんですけどね。

ピエロのシーンは幻想性がちいとも足りませんでしたよねー。しょぼいピエロでざんねーん。
<< 5月29、30日の公開映画ちぇ... PageTop 第62回カンヌ国際映画祭結果-... >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon