かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『路上のソリスト』 The Soloist
2009年 06月 07日 |
実在の人物を描いているとは知らなかったので・・・。

LAタイムズのコラムニスト、スティーヴ・ロペスはある日、べートーヴェンの銅像のある公園で2本しか弦のないヴァイオリンを弾くホームレス、ナサニエル・エアーズに出会う。



路上の弦楽器演奏って、すごくいいよねぇ。ヨーロッパの街だったら、さほど珍しい光景でもないと思うのだけど、アメリカはLAの路上でバイオリンというのはやはり珍しいのかな?それも演奏者はアフリカ系のホームレスだもんね。ロマのミュージシャンが路上でジプシー・ミュージックを奏でるというのとはまた違った趣で、LAでホームレスでアフリカ系でクラシックという組み合わせが名コラムニストの興味を誘ったということかなぁ。

演奏しているのがブラックミュージックだったら、さほど関心をもたれなかったのかもしれないよね。というか、ナサニエルにジュリアード音楽院の学生だった過去がなかったら、ロペスは彼に関わろうとはしなかったのだろうか。ジュリアードに入れるほどの才能ある音楽家がホームレスになってしまったなんて関心をもたずにはいられないけれど、そんな類まれなる才能をもっていないその他大勢のホームレスは、その生活も仕方なかろうっていうことなの?いえ、スティーヴ・ロペスというコラムニストでもある一個人が誰に関心を持とうが、誰と友達になろうが、誰を取材対象としようが、それはその人の自由だから別にかまわないけれどね。ただ、私のものさしでは、映画としてヒューマン・ドラマとしてこういうお話が成り立つのは腑に落ちないものがあったのだよね。

というか、鑑賞時は、これは実話ベースだと全然知らなくて、ミュージシャン、ホームレス、統合失調症、×ジャーナリストなんて、いかにもなおあつらえむきの設定だけど、物語展開はちょっと安易で単純な気がして、どうせならもっと練った脚本にすればいいのに、なんでこういうのを映画にしたんだろう?って疑問を感じながら、眺めていたのだよね。後で、これは実在するコラムニストのロペスの実体験が執筆されて、それがそのまま映画化されたということを知って、ようやく理解。虚構の物語としてはちょっと捻りが足りないんじゃないかと思える筋書きではあったけど、これがリアルタイムで新聞記事のコラムに書かれている出来事ならば、それはとても興味深いことだよね。なるほど、納得。

ジュリアードだから?という部分に引っかかりをもっていた私だけど、ロペスの記事によって、市長に働きかけができて、公的資金がホームレスの人々全般を救うために投入されることになるという結果が生まれたのはよかったな。それこそが、新聞社の記者として意義深い仕事だよね。

ナサニエル・エアーズのように、クラシック音楽に才能を輝かせるアフリカ系アメリカ人もいるのだということに注目しつつも、ジェイミー・フォックスの場合は、どちらかというとソウルフルな音楽の方がやっぱりハマるよね?だって、弦楽器の演奏シーンにはそんなに心動かされなかったけど、彼が、ドラムを叩く真似ごとをしながら、ラップのリズムでさらりと歌ったシーンは最もエキサイティングだったもの。ナサニエルを知ることで、アフリカ系はリズム系が最高っていうの固定観念から放たれるどころか、やっぱりジェイミーにはビートが必要って思ってしまったのであった。

でも、オーケストラの演奏シーンなんかは素晴らしくて、音楽ものとしての楽しみは感じられたかな。べートーヴェンの曲などが主だったシーンに使われていたから、今回はダリオ・マリアネッリのオリジナル曲の素敵さには気づけなかったのが残念。ジョー・ライトはイギリスで撮ってくれる方がいいと思う。

映画の中のナサニエルとロペスの交流模様にはさほど感動を覚えなかったけれど、現実世界のロペス氏とエアーズ氏は長い付き合いを重ね今でも交流があるそうで、それはとてもすてきなことだなぁって思います。俳優としてのジェイミー・フォックス&ロバート・ダウニー・Jrはそれはそれは魅力的だけど、本人に近い年齢、雰囲気を持つ俳優が演じた方がヒューマン・ドラマとしては味わいがあったような気がしないこともない。

↓こちらのブログ記事でリアル両氏の写真が紹介されているのですが、本物のエアーズ氏の姿がすごくよいです。
Purple Pearl
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by CaeRu_noix | 2009-06-07 11:01 | CINEMAレヴュー | Comments(8)
Commented by kusukusu at 2009-06-07 12:43 x
なるほど。この感想は分かります。
映画評論家の評を見ても、この作品は『つぐない』よりも評価が低いようなのだが、たしかに虚構のドラマとしては中途半端に思えるところがあるのかな。
が、個人的にはこれは最高に面白かった。僕個人としてはそういう作り方をしている部分が逆に面白かったんだと思う。
実は僕も実話だとは知らなかったんです。で、『つぐない』の監督の新作ということだから、現代を舞台にしてももっとドラマっぽいのかと思っていたら、ドキュメンタリー的にホームレスの人達をとらえた映像が入ってきたり、記者の、自分がやっていることは偽善なんじゃないか?みたいな現実的な葛藤のほうに話が行く。虚構のドラマを紡ぎあげていくというよりそういう現実的な方向に行くので、個人的にはそこが面白くて、『つぐない』の監督がこういう作り方に展開していったのか、凄いなあとびっくりしてしまった。つまり、実話だとは思っていなくて、虚構のドラマなのに、あえて現実的に、ある種、ドキュメンタリー的要素も入れて作ったのかと思った。
Commented by kusukusu at 2009-06-07 12:45 x
後で実話だと知ってそこらへんは勘違いして見ていたところはあったのかもとは思い返したが。
でも、勘違いでもなんでも、個人的にはこれはもの凄く興味がある作品です。自分で言うのもなんだけど、なぜ自分はこういう作り方の作品にひかれるのか、そしてなぜ僕はひかれるのにこういう作り方の作品をほかの人が見ると乗れなかったりするのか・・という意味でも興味深いです(笑)。
実は、前作『つぐない』を、ある人から、あれは絶対、あなたが見ておいたほうがいいと言われて見たんですね。僕は、「あいつの趣味は変わっている。よく分からん」と人から思われている人間のようなので(笑)、あまりそういうすすめ方を人からされないのでふーんと思って見に行った。が、『つぐない』は映像とかは面白かったけど、映画としてお気に入りという程ではなかった。でも、今度の『路上のソリスト』を見て、おお、この監督を僕にすすめてくれた人は当たっていたのかもなんて思ってしまいました。
Commented by CaeRu_noix at 2009-06-07 17:38
kusukusu さん♪
コメントをいただく前に映画生活をのぞいたのですけど、kusukusuさんが傑作 という言葉を使われていたので、私とは感じ方が違うんだなぁと思っていたところでしたー。実話ものだと思わずに鑑賞をしたのは同じなんですが、それゆえの感想は正反対という感じで。w
『つぐない』はあれこれ賞をとっていましたし、一般的にはあちらの方が出来がよい映画になると思います。私としても同じく。でも個人的には、この監督の作品なら『プライドと偏見』がすごくよかったなぁって思っています。あの躍動感と、ダリオ・マリアネッリのピアノ曲のすばらしさったらなかったです。才能のある監督だと思いますが、今回はそんなにそのセンスを感じませんでした。撮り方としては手堅くいい仕事をしていたと思うのですが、イギリスのジョー・ライトがLAのホームレスを撮らなくてもいいのになぁって思いました。この題材なら、ロスという街に親しんでいるアメリカ人監督が撮る方がもっと愛情のあふれる映画になったんじゃないかなぁって。ヨーロッパの監督がハリウッドで仕事をすることが基本的にそんなに好きじゃないもので。
Commented by CaeRu_noix at 2009-06-07 17:41
ジョー・ライトが進化して、こういう題材にチャレンジしたとういうよりは、たまたまオファーされたのがこういう企画だったということですよね??せっかくマリアネッリという素晴らしい映画音楽家の盟友がいるのに、ベートーヴェンが聴かせどころのメインになっちゃうのはもったいないなぁって。アメリカ舞台のホームレスというと『フィッシャー・キング』を思い出さずにはいられなくて、ベートーヴェンもいいけど、I Like Gershwin tune, how about you? だよねぇ、やっぱり、って思っちゃうのでした。あと、そう、鑑賞中に『再会の街で』を思い出したのですが、あれを感動作と思えなかった私は、やっぱりアメリカ製のヒューマン・ドラマとは相性がよくないんだよなって思ったりして。この手の設定のヒューマンドラマは基本的に好きで、たくさん観ているので、自分の感銘基準が手厳しくなっているというのもありますかな。
いい映画だとは思うのだけど、後々さほど印象には残らないフツーなレベルに思えました。でも、やはり音楽ものは劇場鑑賞必須ですね。尿ネタで笑いをとるってのはゲンナリでしたけど・・。
とにかく、kusukusu さん的には手ごたえのある映画に出会えて何よりでしたー。
Commented by KLY at 2009-06-08 01:42 x
難しい作品でした。
私はどうしてもロペスの上から目線に嫌な感じがぬぐえませんでした。相手が統合失調症だからというだけでなく、ホームレスだからという部分もあるように見えたんです。まあ、そういうストーリーの流れであり、ロバートもそう見えるように演じていたのでしょうから、ある種乗せられた訳で、演技力と脚本は逆に上手いと言えるのかもしれません。
ただ、ラストに到るまで、どうしてもそのロペスの行いに対する救いというかフォローが感じられないんですよ。何だか急に思いついたように、襟を正してお友達だと言われても「は?」という感じでして…。何でロペスがナサニエルにそこまでこだわり、どうして知らず知らずの内とはいえ自分のエゴで動くようになってしまったのか、その部分がキチンと描かれていないように思うのです。というか、ナサニエルの描写に対してロペスの方が浅いとでもいうのでしょうか。
救いが無いまま終わってしまったので、嫌な感じだけが残ってしまい、私にとってはちょっともう観たくない作品となってしまったようです。
Commented by CaeRu_noix at 2009-06-08 23:59
KLY さん♪
これが全くのフィクションだったなら、私にとっても難しい映画といえたかもしれません。
自分はホームレスに話しかけることはないと思うけど、もしも接することがあるとしたら、そのオジサンが年齢的に目上なら、一応はそれ相応の対応をするかなぁと想像。でも、社会の落伍者という感じの汚い格好をしたホームレスを見下すように接することは、わりと一般的という気もするんですよね。それも、社会的にある程度の地位や特権をもつ職業に就く人ならば、かなり自然に上から目線の接し方をすると思えます。だから、ロペスが特別に横柄ということでもなかったかなぁと。(問題にするとしたら、ロペスが、ではなくて、僕らが、かな)
それが交流を通じて、ロペスがナサニエルに相応の敬意を払っていなかったことに気づくくだりはドラマ的にはとてもいいと思います。が、しかし、そのへんが巧く描かれていたとも思えなかったですよねぇ。ちと唐突な印象。
ロバートが演じると若干軽めのフレンドリータイプになっちゃうから、本来の関係性/接し方の対等さ/敬意のポイントが見えにくかった感じもしました。
そんなこんなで、ヒューマン・ドラマとしては、テーマが伝わりにくかったですよね。
Commented by mchouette at 2009-06-18 08:56
かえるさん 私はこの映画は良かったわ。
あまり年齢的な違和感は感じなかったし、ライト監督の映像、カメラワーク。彼の映像表現の上手さを改めて感じました。
ロペスを君は僕の神様だというナサニエル。
みんな自分の価値観、正義をもっていて、そのものさしで他の人も観てしまうけれど、でも人間は神にはなれないんだよね。
人間の尊厳…それを静かに二人の人間を通して描いている。ジェイミー・フォックスの演技が素晴らしかったわ。
ライト監督の次回作を期待してしまうシュエットでした。
Commented by CaeRu_noix at 2009-06-18 23:57
シュエット さん♪
手ごたえがあって何よりでしたー。
鑑賞中は、実話ベースだと知らなかったので、年齢に違和感があったということではなくて、でも、個人的にはダウニーjrが演じるコラムニスト、ロペスのキャラクターがナチュラルに響いてこなかったのでした。で、後から、実物のことを知り、映画の主人公も本人に近い年齢設定だった方がよかったなと私は思ったのでした。
でも、もちろん、演技としては充分なものだったし、そう、ジェイミー・フォックスのウマさは改めて感じました。
先のコメントでも述べたようにジョー・ライト監督作の中では、私はこれはあまりよさを実感できなかったのですけどね。
客観性を目指したルポルタージュなんかとはまた違い、コラムやエッセイを映画にするのは案外と難しいのかもしれませんね。テーマが見えにくい感じ。
なるほど、シュエットさんは「人間の尊厳」が一番のテーマと受け取ったのですね。
個人的に興味をもってもらえない音楽の才能のないそその他大勢のホームレスはミスターと呼ばれる機会すらないのか、とつい考えてしまうひねくれた私は、どうもしっくりこなかったんですけどね。
似た系統では次、『扉をたたく人』に期待。
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