かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ウルトラミラクルラブストーリー』
2009年 06月 15日 |
農業。脳/業。
陽人は、『ポンヌフの恋人』、『汚れた血』のドニ・ラヴァンのイメージなんだって。なるほど。

青森で農業にたずさわって暮らす25歳の陽人は、東京からやって来た保育士の町子に恋をする。



キャベツ畑に埋まっている松ケンの姿がへんてこラブリーでインパクト大だった本作のフライヤー。松ケンは本当に何でもやってくれる俳優なんだなーって本編鑑賞前から妙に感激。青森出身の松ケンと女性監督が故郷を舞台にコラボなんて楽しいじゃないですか。そっち方面の人たちに好評を博していた横浜聡子監督の前作『ジャーマン+雨』は見送ってしまったので、私は初商業映画の本作で初対面。

DMCでの松ケンの田舎青年キャラを思い出しつつも、こちらは基本的にはラブストーリーなんだから、人セクに近い等身大のかわいい松ケンが見られるのかな?と思っていた。でも、そこは自主映画で独創性を培ってきた若手監督ゆえに、TVドラマやハリウッドラブコメのように定番パターンをなぞるわけがなく。それにしても、ハジケキャラという前情報は掴んでいたものの、予想以上に主人公ヨウジンが奔放駄々っ子キャラだったので、序盤はちょいと居心地の悪さを感じた。

だって、そういう人物設定だとは知らなかったんだもん。ノーテンキに無邪気に元気なのはいいんだけど、大人として常軌を逸脱した感情的な行動にちょっと不快感。農業を営む人間がせっかく育てた野菜を投げつけちゃうってどういうこと?!いくらなんでも、窓口でのーやくくれーってわめきながら、そこに置いてある物をぶちまけちゃうヨウジンの非常識行動がその場で静観されているのはヘンだよね?・・・ってようやくわかってきた。彼はそういう意味で子どものような存在なのだって。

マチコ先生もたぶんそうだったんじゃないのかなぁ。最初は、田舎にはヘンな人がいるもんだなぁと身の危険を感じつつヨウジンの突飛行動にタジタジしていたんだろうけど、やがて彼の特別な純真さを理解し、保育士を職業とする生真面目で傷心の彼女は、ヨウジンのまっすぐな思いに心うたれてしまったんだよね。他でもない、ただ両思いになることが望みだなんて、男女関係への不信感に苛まれていたマチコちゃんはズキュンでしょう。彼女の一言でノーヤクシャワーまでなんて。

「沈黙の春」を読んで以来、農薬が憎いぜって思い込んでいる私には、相当にブラックなエピソードに感じられて、解釈に戸惑うところもあったんだけど、そのアプローチは面白いかもしれないね。農薬によって、好かれる大人になれた反面、ヨウジンの天真爛漫さは失われ、でも、心臓止まっても生命を維持できちゃったのならいいのか?心臓という言葉には「心」という文字が使われているけれど、やっぱり心は脳なのかな。とすると、頭部のないカナメっちは、そりゃあ成仏もできない?

そもそもキャベツ畑っていうと、シュヴァンクマイエルの『オテサーネク』のことを思い出すから、オカルトな生命力もごくわりと自然につながる感じ。アンド、ミラクルといえば、ライフ・イズ・ミラクルなので、クストリッツァ映画のごとく、生命力みなぎる物語に動物登場っていうのには嬉しくなっちゃった。『ベアーズ・キッス』のラストのように感動的ではないけどユーモラスだし。小さいノウだけど、おいしいらしいよってのがおかしいな。遺灰をまく代わりに、ノウを投げる?鳥葬よりも一部クマソウに有難みがあるのだ?というわけでわけがわからないなりに、全ての辻褄が合っているような気にもさせられるような。とにかく、ヨウジンのピュアさがまぶしく思い出されるの。というわけで、好感触。

幼稚園児たちの自然な元気さが素晴らしくよかったので、へんてこ物語もキラキラ度が増したのだ。
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by CaeRu_noix | 2009-06-15 22:02 | CINEMAレヴュー | Comments(10)
Commented by こべに at 2009-06-16 01:17 x
こんばんわ!かえるさん☆
かえるさんが、好感触でホっ。

勝手に人セクの松ケンをイメージして行っちゃったのですが
あんれぇ?なんだこの子!!と、
びっくりしたり寝ちゃったりもしたのですが
森を嬉しそうに駆けるヨウジンくんの姿にはポロポロ零れてしまいました。
わけはわからないけどキライではなかったですー。

とんでもないキャラを普通に演じちゃう松ケンも凄いです!





Commented by きおっきー at 2009-06-16 10:03 x
あら。。。私は予告編を見て(見ただけ。フライヤーは読んでません)、てっきりmentally challengedな男の子の恋かと、、、でもそれくらいハジケキャラみたいですね。かえるさんが評価されてるのなら、DVDになったら(オイ)見てみたいと思います。
Commented by CaeRu_noix at 2009-06-16 23:28
こべに さん♪
好感触でっす!かなりよかったっす。
人セクほどに格別ではないけれど、かなり満喫ー。
そうなんですよ。人セクの松ケンがいくらかDMC風味におちゃらけた感じのキャラをイメージしていたので、なんだこの子どもはー!と最初はドキリ。びっくり寝?
森を駆けるところはすんごいよかったですよねー。映画的!
津軽弁な松ケンもまたナイス・ガイでしたー。

森のクマさんといい、駆けるヨウジンといい、やはり野生バンザイがてーまなんすね♪
それは野蛮といわれて、秩序だった大人たちの社会では煙たがれるものだけど。
自由で本能的な姿に人間の本来の素晴らしさ、生命の輝きがあるのですな。
農業っていうのも自然のもののようで、雑草や虫を排除することで唯一の植物を育成するコントロールされたものなんですもんね。
森こそが本来の自然なんですよねぇ。
農薬にまけるなー。
Commented by CaeRu_noix at 2009-06-16 23:34
きおっきー さん♪
あ、そうなんです。予告を観ただけのきおっきーさんの方がその設定を一目で把握されたようでー。あら、なんてこと。
私は、予告は観ない主義なので観ていなくて、フライヤーも裏面の文章を読んだわけじゃなくて、何ヶ月も前からキャベツ畑に埋もれた写真を目にしていただけで。私はわりとコメディタッチの演出をイメージしていたので、普通の青年だけど並はずれた奔放人間なんだろうと最初は思っていたんですよ。が、そう、mentally challengedな男の子ってところでした。
そのことに一見気づかないほどに周りの人たちが自然に接しているのがまたいいんですよねぇ。

きおっきーさんが年に何本も邦画もご覧になっているなら、是非これも観てみてーって思うけど、たぶんそうではないと思うのであえてコレは薦めません。(笑)
でも、たまにはご覧になるのかしらー?話題のおくりびととかー。
Commented by Nyaggy at 2009-06-22 13:06 x
かえるさん、こんにちは♪
私も最初は陽人のあまりな奔放ぶりに、あんまり好きになれないかも・・・
って思ってたんですが(特に野菜投げちゃうとことか)、設定に気が付く内に
段々と陽人に魅力を感じるようになりました。
子供っぽい、じゃなくって、まるっきり子供なんですよね、良くも悪くも。
かなめに手紙を出したり、偶然?出会っちゃう所が好きですー。

ラストは映像的に軽くひいてしまって、イマイチ消化できてないんですが、
全体的にはパワーに溢れてて好きな作品です。
津軽弁がいいですね~。
Commented by CaeRu_noix at 2009-06-22 21:56
Nyaggy さん♪
そうなんですよ。それとは知らずに見始めたヨウジンキャラには絶句。
せっかく育てた野菜を投げちゃうところはキーってなっちゃいましたもん。
でも、まっすぐでかわいい奴なんですよねぇ。
大きい図体の駄々っ子というのは周りの人はたいへんだろうなって思うのに、みんなごく自然に接していたから、田舎の寛容さはいいなーって。
かなめさんと出逢うシーンがまた面白かったですよねー。
ARATAくんのお顔が拝めなかったのは残念ではありましたがー。

私も、内臓系は結構苦手なんですけど、体からそれがはみ出てる状態とかじゃなく、単独であるノウっていうのは、あまり生々しさを感じなくて、そんなに拒絶反応はなかったのでした。
そんな遺言まもるなんてーっていう可笑しさでグロさも打ち消されていたカンジ。
ハンカチお落としをしても、キャッチボールをしてももはやOK。
へんてこパワフルで面白かったですー。
津軽弁は難しいー
Commented by denkihanabi at 2009-08-09 02:57
エキサイトのトラバをつらつら読んでて、あ、カラックスなんだ、やっぱり、とか思ったら、カエルさん、あなたじゃないですか。で、クストリッツァを感じると。
トラバします。
これは、傑作ではないと思うんですよ。でも、わくわくがありますね。
Commented by CaeRu_noix at 2009-08-10 00:27
denkihanabi さん♪
冒頭からカラックス!とか言っているのは、もちろん私です。
今年は「ポーラX」と「汚れた血」にスクリーンで再会したカラックスイヤーなので。
でも、私は鑑賞時はカラックスとは気付かなかったんですよ・・・
で、感じましたよね。クストリッツァなるものはビシバシと!
もちろん若手監督、まだまだ傑作の域ではありませんが、心に残る魅力的な一作でしたー。
ウキウキしましたとも。
Commented by sakurai at 2009-08-28 11:48 x
TBありがとうございましたあ。
子供のような・・と言う表現を随所で見かけたんですが、子供でもあんな行動はしませんよね。
いわゆる自閉的な症状のひとつが、彼だと思うのですが、見てて、まず必要だったのが、きちんとした処方だったのではないかとか、自閉的な人たちが大人になって、自立を目指す難しさとか、結構現実的なことを考え込んでしまいました。
「彼女の名はサビーヌ」もごらんになられたんですね。
あの上映会を企画したもんで、さまざまなことがあって・・・・・、なんか見てて、身につまされました。

そっか、ドニ・ラヴァンねえ。なるほど。

いろいろありましたが、ラストは相容れませんでした。
Commented by CaeRu_noix at 2009-08-29 01:18
sakurai さん♪
コメントありがとうございます。
そうですかー。そんなふうに思考してしまうと、場合によっては、こういうキャラ設定はビミョウなものに感じられてしまうかもしれませんね。
コテコテの感動のヒューマンドラマの題材にされるよりは、さりげなくて突き抜け感のある本作には私は好感がもてるのですが、人によっては、ひょっとしたら不快に感じてしまう設定かもしれませんもんね。
子どものうちはいいんですけどね・・・。
体だけが大きくなっちゃって、行動が幼児のままだったら、周囲の人は大変でしょうね。
のびのび元気で純粋でいいなぁってのんきなことは言ってられないでしょうね。
どういう処方がベストなのかって私にはわからないのですけれど。
そう、『彼女の名はサビーヌ』を観た時も、家族はどうしてあげるのがベターなんだろうってことを考えさせられました。
明らかな怪我や特定の疾患とは違って、難しいですよね・・・。
上映会を企画したなんて素晴らしいです!
山形といえば、ドキュメンタリーですもんね。
サビーヌもまた心に響く作品でした。
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