かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
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『愛を読むひと』 THE READER
2009年 06月 22日 |
原作が好きなので・・・。



アンソニー・ミンゲラ監督で「朗読者」が映画化されるんだってという情報を聞いたのはずいぶん前のこと。私がその原作小説を読むよりも、そのニュースを知ったことの方が先だったかもしれない。ベルンハルト・シュリンクの小説「朗読者」を読んだのは2001年だったかな。テーマが重層的でとても深い感銘を受けた小説であった。

ずいぶん前に映画化の話を聞いていたのに、それにまつわるニュースはしばらく聞こえてくることがなく、やがてアンソニー・ミンゲラの訃報を聞くことになった。とても残念な知らせであり、じゃあ「朗読者」の映画化はどうなったのだろうとも思った。長編小説の映画化作品とは相性がよくないと感じることも多い私なんだけど、ミンゲラの『イングリッシュ・ペイシェント』と『コールド マウンテン』はとても気に入っていたので、ミンゲラならば安心できるものがあったのに。

ミンゲラとポラックの死去によって、一時は見通しが暗くなったようであったが、やがてスティーヴン・ダルドリーがメガホンをとって、無事に完成したことを知る。その上、アカデミー賞の主要賞にノミネートされ、ケイト・ウィンスレットが主演女優賞を獲得するという栄誉に輝いた。それは何よりと思う反面、この映画のニュースを見るたびに、原作小説を読んでからもう8年も経つのに、英国俳優による英語劇であることを受け入れられないでいる自分を意識した。ハンナがケイト・ウィンスレットねぇ・・・。

映画の『重力ピエロ』を満喫しきれなかったのは、原作小説を読んでから1年も経たないうちに映画を観ることになったのがネックだったと思うのだけど、本作の場合は、8年も経過しているのだから、別ものだと思うことができるんじゃないかと考えた。でも、やっぱり深い深い感銘を受けた「朗読者」だったから、その思い入れを簡単に追いやることはできなかった。細部は憶えていなくても、肝心な場面は鮮烈に記憶に焼き付いているものだから・・・。

『ワルキューレ』が英語劇なのは、思ったほどに悪くなかった。戦時中のとある作戦を描いたドラマなので、話し言葉の言語が実際と異なる外国語であることは大きな問題ではなかった。でも、本作は他でもない「朗読」が、「読み書き」がとても重要なものであるのだから、それがドイツ語ではなくて、英語で物語られることに大きな無念さが残った。ドイツ語の響きって、独特で素晴らしいものだと思う。男性の落ち着いた声のドイツ語って、すごくセクシーだったりすると思うから、ドイツ語で朗読をしてほしかったなぁ。ドイツ人のデヴィッド・クロスくんに英語を話させるなんてー。英語の響きはあまりにも味気ない。リーダーですってよ。フランス語ならミシェルで、イタリア語ならミケーレで、スペイン語ならミゲルで、ドイツ語ならミヒャエルという名前が、英語だとマイケルになっちゃうのはとても悲しいよ。マイケルって、奇声あげそうなイメージだもの・・・。LADY、奥さん、THE,THE,THE・・・。LADYだけじゃ奥さんかどうかわかんないじゃん、ってどうでもいいことが気になったり。

というわけで、それぞれの俳優の演技は素晴らしいと思えたし、雰囲気はいい感じの上質な映画であったと思うのだけど、小説を読んだ時の感銘のインパクトを忘れることができなかった私は、そこそこにしか映画を味わうことができなかった感じ。長い年月のいくつかの年代を演じ分けるというのは難しいことだから、こんなものかなとも思えるのだけど、95年とそれ以前の時代のレイフが髪型を変えても同じくらいの年に見えたり、15歳と学生のマイケルも同じに見えるのに、逆にその両者は同一人物としてうまくつながらないことが引っ掛かった。そのせいなのか、せっかくの長い年月の経過が手に取るように実感できなくって、マイケルの思いに心寄り添えないまま傍観してしまっていた。

思うに、小説のいいところは一人称で語られることなのだ。主人公の心の旅にガッツリ同化することができるのに比べ、映画は第三者の視点で物語られるような感じになってしまうのがミソ。主人公がざんざん頭の中で思い悩んだことが、映画ではさほど描写されず目に見える行動が一番の見せ場となってしまう。そして、レイフとデヴィッド・クロスくんが自然にしっくり同一人物に思えなかった私には物足りなさが残るのであった。

場面的には、2人の出会いのあった蜜月の幕が映画的に最も美しいものだったかな。お馴染みのプラハで撮影される石畳の街並みはやっぱりステキだよね。思春期の性少年のドキドキ恋物語が一番の見どころ。あと、テーマ的によかったのは、ブルーノ・ガンツ先生と共に学生たちが議論したシークエンス。原作とは違う設定だったと思うけど、その場面でこの物語のテーマの重要なポイントについて切り込んでいたので、量は少なめながら、そこは興味深かったかな。被害者がたまたま本を出版したという理由で、犯罪者が出来上がってしまうというのは確かに理不尽だ。考えれば考えるほどに難問である戦争犯罪について、次世代の向き合い方について、小説ではもっと掘り下げられていたのだけれど。
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by CaeRu_noix | 2009-06-22 08:08 | CINEMAレヴュー | Comments(7)
Commented by mchouette at 2009-06-24 10:57
私は原作と共鳴しあって胸が詰まったわ。3回も読み返した原作!
原作を斬り捨てた部分が映像の行間から伝わってきて、ハンナとミヒャエル(映画ではマイケルね)の心情がより浮き上がってきて…
脚色も上手いなって思ったわ。雪の降りしきる日に面会に行ったミヒャエルが立ちすくんで踵を返すシーンなんて、彼の心が痛いほど伝わってきたわ。今日、もう一度、今度は友人と一緒に観にいくの。
Commented by CaeRu_noix at 2009-07-02 01:18
シュエット さん♪
なるほど。私の場合は、原作に心打たれすぎていたために、そのイメージに囚われすぎてしまって映画を全面的に受け入れられなかったクチなんですが、逆に、シュエットさんの場合は、三度も読まれて原作の世界を理解していることで、よりよく深く映画を堪能できたという感じなんですね。それは何よりです。
原作を読まないで映画だけを観た人は、主人公にそれほど感情移入もできなかったりするケースもあるらしく、ひょっとしたら原作を読んだ人の方がより映画にハマれるようになっているのかもしれませんね。
ケイトのハンナには小説よりも心寄り添いやすくなっているようで、それが文芸ロマンスものとしての映画としての成功要素の一つだったのかなぁって思います。
私は小説の一人称のミヒャエルの思考・感情にどっぷりハマっちゃったゆえに、映画で第三者目線でマイケルとハンナの姿を眺めることに、真髄を感じきれなかったのでありますが・・・。
何十年もの時を2時間におさめる、文学作品の映画化ものとはどうも私は相性がよくないんですが、風共以来?こういう映画が評価されるのってよくわかります。
Commented by アリエル at 2009-07-03 12:16 x
はじめまして。
。原作、すぐ読んでいます。
ドイツ語で映画化してほしかったですね。
レイフにドイツ語を話してもらい、ドイツ人女優さんで。

感想はブログに書きました。
忘れていた原作との比較なども、考えさせられる映像化でした。

Commented by CaeRu_noix at 2009-07-04 09:23
アリエルさん♪
はじめまして。コメントありがとうございますー。
原作発売後すぐに読まれたのですね。
翻訳ものは発売後すぐ読む習慣のない私ゆえ、自分の中では「朗読者」は結構早くに読んだ方じゃないかなって気がします。
そして、ミンゲラ監督で映画化予定ということと合わせて、この小説のことを紹介してくれたのは、映画好きなネット上の友人だったということも印象深いのでした。

そうなんですよ。ドイツ語で映画化してほしかったです。
アリエルさんはレイフがお好きなんでしょうか。
個人的にはごめんなさい、やはり、英国俳優なレイフではなく、ドイツ人俳優に主演してほしかったです。女優ももちろん。
まぁ、英語劇として名の売れたスタッフ・キャストで作られることで、アカデミー賞受賞に絡んだり、世界の多くの人に観られる映画になったわけなので、変えようのないことだったのでしょうけどね。
どのシーンを採用し、どの場面を削り、どのエピソードを脚色するか等の選定結果が私の好みではなかった感はありましたが、比較してみるのも面白いですよね。
原作本もまた売れているようですし、意義のある映画化だったと思いますー。
Commented by baron at 2009-07-17 22:57 x
初めまして。
時々そっと読ませていただいていました。
今日やっと観てきたのですが(原作はこれからです)やはり私もドイツ語で演じてくれていたら・・との思いが観ていてずっと残りました。
ドイツ語で読むチェーホフ聞いてみたかったです。(THEの部分はFrauとかになるんでしょうか・・)これから原作を読むのが楽しみです。
またお邪魔させてくださいね。
Commented by baron at 2009-07-17 23:01 x
度々すみません(汗)FrauではなくてDieでした・・(赤面)
Commented by CaeRu_noix at 2009-07-18 01:02
baron さん♪
はじめまして!いらっしゃいませ。
コメントありがとうございます。だんけしぇーん。
ええ、本当にドイツ語の朗読を聴きたかったですー。
そういえば映画では、チェーホフの「犬を連れた奥さん」(「小犬を連れた貴婦人」という方が私は好き。)がとりわけ重用されていたのが印象的でしたよね。
原作では確か、それほどに「犬を連れた奥さん」に言及する場面はなくて、著者のシュリンクがこだわっているのは、『オデュッセイア』の方なんですよね。(「帰郷者」でも)
なので、脚本家、或いは監督がチェーホフが好きなのかなぁなんて思ったりもしたのですが、そうではなくてテーマの比重に合わせてのものなのかな?
baron さんは、これから原作を読まれるのですね。
映画では描かれていなかったドラマを楽しんでくださーい。
原題のDer Vorleser は男性を指しているし、読み聞かせる(朗読する人)を表しているそうですが、英語訳の The Reader だと性別もわからないし、1人で読んでいる人ともとれるということで、そこのへんからもう、違うんだよーって。
といいつつ、ドイツ語はわからないので大丈夫です。冠詞もわかりませんから。w
ぜひぜひまた遊びに来てくださーい。
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