かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
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『蟹工船』
2009年 07月 10日 |
それでも働くカムチャッカ。

カムチャッカ沖。蟹を缶詰に加工する蟹工船・博光丸の船内では、出稼ぎ労働者たちが安い賃金で過酷な労働を強いられていた。



現代的にカジュアルにアレンジされた「蟹工船」ということだったので、かなりハジけた演出なのかと思いきや、さほど冒険はせずにわりとストレートに作られていた印象。思えば、この昭和初期のプロレタリア文学の代表作がこの時期に脚光を浴びたのは、ワーキングプアのあふれる現代に共感できる労働者待遇が描かれていたからであるらしいから、遊びをきかせすぎて茶化しているような感じにすることを避けて、テーマを堅実に描こうとするのは当然だよね。ただの観客の私は、『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』くらいノリノリにハチャメチャな設定でもよかったなーと思ったりしたのだけどね。

本当はもっともっとパンクなファッションでもよかったんだけどなぁ。でも、とりあえず、船内なのに白いロングのトレンチコートに乗馬ブーツな浅川・西島秀俊監督のお姿がそれは麗しくて。等身大な役どころが多い彼なので、時々こういうつくりこみキャラを見せてくれると嬉しくなっちゃうね。そんなわけで暴力に不快感も感じなかったりなんかして。むさくるしい男たちの集団の中、主演キャストの存在感に惹きこまれてかなり楽しめちゃった。最初の方に台詞があった脇役の人の中には拙さを感じてしまう人も若干いたけど、松田龍平くんの登場で一気に場面が引き締まる。高良健吾くんも魅力的だよね。(あのミヨちゃんが好きというのは納得いかないけど。) とにかく熱演する彼らが繰り広げるやり取りの中で、場面展開を興味深く見つめられたカンジ。

ハジけてほしい願望ついでにミュージカル化も少し妄想。『シカゴ』の囚人たちが檻の中で順番に罪の告白をしつつ歌うシーンのように、雑夫な彼らが順番に自己紹介や不平を歌にするって楽しいと思ったんだけどね。(なので、コサックダンスは嬉しかった。)でも、そんなふうにしたら、不真面目すぎると顰蹙をかっちゃうだろうか。そうでなくても、本作の中途半端にライトでユーモラスなところが巷では不評だったりもするらしいから。確かに、そう、いっそのこと娯楽映画としてのヒットは度外視して、リアルで切実な社会派ものを作ってほしかったなーとも思った。原作のエッセンスを盛り込んで、不遇の労働状況で苦しむ若者の嘆きを代弁するようなシビアで直球の社会派映画というチャレンジを。でも、SABU監督でこのキャストで作られるという時点で、エンタメ路線の仕上がりは当然の方向だし、テーマを思えばこれが必然。

過酷な労働環境を切実に描き、社会のシステムの理不尽さを訴えるという切り口は社会派映画としてはアリなんだけど、そもそもそれは本作のテーマではないんだよね。不公平な社会の問題を描いて追及することも時には必要だし、今蟹工船がブームになったのはどちらかというとそういう主旨なのかなと思うけど、本編はそういう目線の話で進まないのだね。あくまでもそれは我々の問題であって、誰かに対して不満を吐き出すだけでは何も始まらなくて、我々が団結して行動しなくちゃなんだってこと。そんなのはわかりきっていることなんだけど、システムそのものが不公平に凝り固まっていることを実感するたびに、あきらめて不満をためるだけになってしまいがち。だけど、こうやってみんなが当事者意識をもって立ち向かわなくちゃ何も始まらないんだよーってことを思い出させてくれる。コミカルにエンタメしながらも、ちゃんと熱く伝わるものはあったと思うよ。

そもそも蟹工船というシステムがすごいよなぁとしみじみ感心してしまう。海の上に浮かべた船でじゃんじゃん蟹を獲って、そのそばからどんどん缶詰に加工するなんて。今なら、船上の蟹食べ放題レストラン経営かな。獲れたての活きのいいカニを缶詰にするだけじゃもったい。そのまま食べたいー。カニ爪はフライにしたい。蟹味噌もー。テアトル新宿のビルの階上の「かに道楽」を見上げつつー。
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by CaeRu_noix | 2009-07-10 23:59 | CINEMAレヴュー | Comments(2)
Commented by ヨゥ。 at 2009-07-11 18:37 x
こんにちは~。久しぶりのSABU監督が嬉しかったです。
『疾走』が自分的にはイマイチだったので…。
「自分たちで考えて行動する」ていう台詞、ごもっともなんですけどね、長いものに巻かれるのが日本人よね~、なんて思っちゃいました。

高良健吾くん、いいですね!今年やたらと出演多いし、注目です☆
Commented by CaeRu_noix at 2009-07-12 12:12
ヨゥ。 さん♪
コメントありがとうございます。
SABU作品は『MONDAY』しか観てないんだけど、あれはノリは好み系の面白さだったんだけど、全体的にはビミョウな映画でした。
今作は、イマイチという評判を垣間見ていたので、期待せずに観に行ったところ、思いのほか楽しめちゃった感じ。
コメディ部分は不評のようだけど、お金持ち妄想シーンで白い衣装でばれーぼーるなんて感覚なんかは私は結構好きなんですよね。

ホント、長いものに巻かれがちな日本人体質。
だから、会社みたいなピラミッド型の組織がうまく機能しちゃうんですよね。
下に苦渋をなめさせて、上に迎合しておけば、自分も上に近づけるって感じで、さらりーまんは上ることを目指し、最上の人たちはラクして儲け、末端の人はひたすら不遇。
が、蟹工船的に、立場が二分割されている場合は、下が長いものに巻かれてもほとんどメリットはないので(抗えば叩かれるというデメリットは付いてくるけど)、数にモノをいわせて団結して立ち上がるべしーってことなんですよね。
真っ当なことを案外と着実に謳い上げていた気がしますー。

高良健吾くん、いいっすよねー♪
フィッシュストーリーでもよかったし大注目!
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