かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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「キェシロフスキ・プリズム」の鑑賞メモ
2009年 07月 18日 |
敬愛するキェシロフスキ監督特集。



『トリコロール』三部作、『デカローグ』『ふたりのベロニカ』などの傑作を遺し、芸術活動の絶頂期に54歳という若さで急逝したポーランドの巨匠クシシュトフ・キェシロフスキ監督。その軌跡をたどるドキュメンタリー映画『スティル・アライヴ』と、貴重な初期未公開作品が初公開。

ドキュメンタリーの『スティル・アライヴ』は観られなかったのだけど、初公開作品を主目的に通いました。以前ルシネマなどでも、キェシロフスキ作品の特集上映の機会はあったけれど、こんなに多くの作品を何度もかけてくれる充実した内容のものは初めてのような気がします。そして、盛況で何より。


『地下道』 Prejscie podziemne 1973年/29分
監督・脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、イレネウシュ・イレディンスキ/撮影:スワヴォミル・イジャク 出演:テレサ・ブジシュ=クシジャノフスカ、アンジェイ・セヴェルィン
ワルシャワ中央駅の地下道。妻との不仲をとり戻そうと、一角で妻と一夜をともにする男。そんな2人を覗き見する人。ナレーションはキェシロフスキ自身。

『初恋』 Pierwsza milosc 1974年/52分/ドキュメンタリー
監督:/撮影:ヤツェク・ペトルィツキ/編集:リディア・ゾン
クラクフ短編映画祭グランプリ受賞(74年)
17歳のヤチカ。妊娠がきっかけで20歳の学生と結婚することに。ドキュメンタリーとはいえかなりの演出が加えられ、私的な出産シーンに微妙な反応を持つ。

『スタッフ』 Personel 1975年/67分
監督・脚本:/撮影:ヴィトルト・ストク/出演:ユリウシュ・マフルスキ、ミハウ・タルコフスキ
マンハイム映画祭グランプリ受賞(75年)
映画演劇技術学校で学び、衣装係の仕立屋となる少年ロメクが味わう芸術の理想と現実。ヴロツワフのオペラ座に映画大学生も加わっての撮影。自伝的作品。

『平穏』 Spokoj 1976年/82分 (公開1980年)
原作:レフ・ボルスキ/監督・脚本:/撮影:ヤツェク・ペトルィツキ/出演:イェジ・シュトゥル、ダヌタ・ルクシャ
グダニクス映画祭審査員特別賞受賞(81年)
3年の刑を終えて出所した平凡な男の不自由。彼の夢は「女、子供、マイホーム」。小さな町での小さな願望は実現できず、映画自体も公開禁止に。

『短い労働の日』 Krotki dzien pracy 1981年/74分 (上映禁止。96年テレビ放映)
監督・脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、ハンナ・クラル/撮影:クシシュトフ・パクルスキ/出演:ヴァツワフ・ウレヴィッチ タデウシュ・バルトシク
1976年、ラドムで、食料価格の高騰により暴動が起き、ポーランド全土に広がる。が、事件の真髄をとらえたこの再現ドキュメントは上映を差し止められる。


ひとえに初期作品といっても、テイストはそれぞれ違っていて面白かったな。『アマチュア』、『偶然』、『終わりなし』 等を観た時も確かそんなふうに思ったのだけど。初期ならではの初々しさのようなものも感じられるし、同時に既にスタイルが確立されているようにも思えてうならされるのであった。ドキュメンタリー的でありながら、他でもないドラマチックな煌めきがあるのだよね。

タイトルのつけ方がまた素晴らしい。本篇を観て、事前のイメージとは異なる題名の意味を知って、その言葉の着眼点に考えさせられたり。『初恋』というタイトルなのに、妊娠出産までが描かれているのが感慨深かったり、オペラ座のキャストに対しての『スタッフ』のジレンマというのも実に興味深かったし。ただ『平穏』に暮らしたかっただけという男の物語もとても面白かった。キェシロフスキの聡明さ、鋭さと繊細さに改めて心打たれるのだった。

それから、第六話でストップしたままだったデカローグの続きもこの機会に鑑賞。

『デカローグ』  1988年
脚本:クシシュトフ・キェシロフスキ、クシシュトフ・ピェシェヴィチ/音楽:ズビグニェフ・プレイスネル

・第7話「ある告白に関する物語」(55分)
高校生のとき娘アンカを出産したマイカだが、体面上マイカの母エヴァがアンカの“母”で通していた。7年後、すっかりエヴァになついたアンカを取り返すため、マイカは実の娘を誘拐するが―子供のできない体となった故孫を溺愛するエヴァと、娘を盗まれたと感じるマイカの、母親同士の対決の行方は?終幕の厳しさは人をとことん見つめるキェシロフスキ監督ならでは。

・第8話「ある過去に関する物語」(55分)
人気教授のゾフィアには、第二次大戦中ユダヤ人少女を匿うための洗礼の立会人になることを、カトリックの教えに反すると拒否した過去があった。しかしある日聴講生として、成長した少女がゾフィアの元を訪れる―消せない罪悪感を抱く者と、「なぜ」を問い続けた者。そんな大きな溝を乗り越え交流してゆく二人の女を描いて深い余韻を残す力作。

第9話「ある孤独に関する物語」(58分)
性的不能になった心臓外科医のロメクには慰める妻ハンカの言葉も響かない。やがてハンカの不倫を疑うロメクの予感が的中、間男の存在に気づいてしまい――。男性なら笑えないシチュエイションから男女の絆の強固さへ昇華、俗から聖を導くキェシロフスキ演出が冴える一篇。キェシロフスキファンなら頷く、“あの”作曲家の曲も劇中を彩る。

第10話「ある希望に関する物語」
父の切手コレクションに莫大な価値があることを知った兄弟は換金して大金持ちになろうと企むうち、段段幼少時のように仲良くなり、次第に切手そのものにも興味を持つようになる。やがて兄弟は連作の切手集のうち所持していない一枚を手に入れようと試みるが、仲介人は彼らにとんでもない“条件”を持ちかけた。10篇中最もコミカルで人間味のあふれる作品。


やっぱりデカローグは素晴らしい。こんなに深いドラマがTVシリーズだなんて信じられない。せつない物語も常だから、しめの10話のエンディングの温かさには心底感動。人生について死について、モノの価値についても考えさせられる見事なテーマとストーリーテリング。

トリコロールも観たかった。

「キェシロフスキ・プリズム」
ユーロスペースではアンコール上映が8月29日~9月25日にレイトショーであるらしい。


チンクイエ!ってポーランド・モードついでに、イエジー・スコリモフスキの『アンナと過ごした4日間』は10月公開、アンジェイ・ワイダの『カティンの森』はお正月公開。

そういえば、スコリモフスキといえば、私、『出発』にとても惚れこんでしまったのですが、そのポイントの一つであったカッコいいジャズ、これ誰の曲?と疑問を持ったきりだったんだけど、最近それがポランスキー作品でお馴染みのクリシトフ・コメダ(Christopher/ Krzystof Komeda)の曲だったことを知り。今更納得しつつ感嘆。『ローズマリーの赤ちゃん』は観ていないのだけど、『水の中のナイフ』の音楽を手がけた人ときいたらね。69年に既に亡くなっているのだけど、今更気になった鬼才コメダさん。余談。ちんくいえー

というわけで、ポーランド。そして、ブルーノ・シュルツ。
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by CaeRu_noix | 2009-07-18 02:02 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(2)
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Commented by ぺりーと at 2009-07-18 20:11 x
こんにちは~。実はわたしも最近ちょっとポーランドモードです♪(かなりくだらないミーハー的理由によるのですが^^;)
というわけで、先日私も行ってきました。といっても1本だけだけど(しょぼくてスミマセン)。思いのほか盛況で、入れないかと一瞬ヒヤッとしました。
ポーランドの風物って、それだけでも絵になるような味わい深さがあるなあと思いました。とても行ってみたい国です~
秋以降に公開される2作品も楽しみですね(^^)
それはそうと、最近ピョートル・アンデルジェフスキさんていうピアニストのドキュメンタリーを見たんですけど、とってもローカルな感じの列車に揺られてワルシャワ、ポズナニ、ザコパネなどを回るみたいな内容で、ちょっとしたロード・ムービーっぽくて面白かったです。車両の中にピアノを入れて、列車にカタコト揺られながらショパンとか弾いていました(^^;

あ、シュルツの小説、2年前くらいに買ったのがあるんですけど、わたしには難しかったみたいで本棚のこやしになっています・・・(^^;;
ちょっと暇ができたので、再びトライしてみようかなあと思いました。
Commented by CaeRu_noix at 2009-07-18 23:54
ぺりーと さん♪
ちんくいえー。
わーい。ぺりーとさんもぽーらんど・もーどなんですねー♪
フェレ似のカッコいいポーランド人でもいらっしゃいまして?w
おお、行かれましたか。
女子トイレ並んじゃうほどに賑わうユーロは久しぶりでしたー。
何をご覧になったか気になりますー。
ポーランドの空気感、とてもいいですよねー。
『アンナと過ごした~』は素晴らしいので、是非ご覧あれー。
ワイダの新作お目見えというのも嬉しいです。
音楽家のドキュメンタリーがロードムービー仕立てなんてすごくステキですねー。
電車の中で楽器弾く人はヨーロッパでは時々いますけど、ピアノ持ち込んじゃうのはすごい。
でも、移り変わる風景と共にショパンの調べが流れるなんてオツ!
今回ポーランド行きも考えていたのですがちょっと寂しい気分になりそうだったのでベルギーにしました。
クラクフなどに行ってみたくて。
ちなみにベルギーではボートに乗ったグランドピアノ弾き人が。

私も以前、シュルツの「肉桂色の店」を途中で挫折。
でも、このたび映画を観るので、リトライです。ぺりーとさんもぜひー
幻想系、いいですよねー。
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