
不思議な彩りのアイテムを楽しみつつ、最後は疑問符多し。
大学教授の父ソール、科学者の母ミリアム、兄アーロンと暮らす11歳の少女イライザはスペリング・コンテストに出場することになった。
アメリカのスペル暗記コンテスト(Spelling Bee)のことはドキュメンタリーの『チャレンジ・キッズ』の予告で知った。順番に違う言葉の問題が与えられるというのは公平じゃないように感じた。全員一斉に同じ問題をリスニングして筆記するテスト形式にした方が公平なのになーと思うけど、公平さよりもコンテストの緊張感と熱狂が重要なんだろうなぁ。競争社会を盛上げるため、メディアの役割のためには・・・。
スペリング・コンテストを勝ち進むもの静かな11歳の少女イライザ役の新人フローラちゃんがすばらしい。訴えるようなその瞳に吸い寄せられてしまう。知的で優しい優等生パパ役はギア様にピッタリだし、何かを胸に抱えた母ビノシュもナイス・キャスティング。兄役はミンゲラ監督の息子なのだね。そんな俳優陣によるナウマン一家はインテリで豊かでまさに理想的な家庭に見えたのだけど・・・。
ありがちな家族の感動ドラマと思いきや、どこに向かうのかよくわからないほどに型にはまらない展開を見せる。笑顔が素敵なジェントルマンパパの独善的な前向きさが傍ら痛く、誰かが大爆発をするわけでもないのだけど、理想的な家族がゆるやかに崩れていく様が見て取れてハラハラさせられる。母ミリアムが具体的に何に苦しんでいるのかがよくわからないのだけど、時折はいるフラッシュバックと不審な行動に危うさを感じてサスペンスフル。感情を吐露するシーンはほとんどないのだけど、父以外は何かを言いたげな不安な表情をするから、その何かをしっかり掴もうと目を凝らしてみる。
言葉に宇宙の神秘がつまっているっていうのは興味深い講義だった。同時に、11歳の娘にそんなことを熱く語り、神に近づける実験を試みるのは端から見ると不安にもなる。息子がヒンズー教系の新興宗教に足を踏み込んでしまうのも、やや唐突で妙な展開にも思えた。それでも、「言葉」の神秘性にスポットをあて、宗教的なアプローチにはただの家族ドラマに終わらない不思議なおもしろみを感じた。皆がそれぞれに神秘を求め、神に近づこうとする。スペリングコンテストの時のファンタジー映像や万華鏡から見えるものの幻想性が重ねられて、物語もどんどん神秘に近づいていくかのように。ティクン・オラム-TIKKUM OLAM-。
サスペンスとファンタジーの入り交じり方に斬新なおもしろさを感じた私の期待をよそにどうやら結局この物語は最初に予告を見て受けたイメージ通りの家族の崩壊と再生のドラマだったらしい。イライザには心寄り添っていたので、彼女の解答には胸をうたれたけれど、結びを迎えて物語を振り返ると一体何だったんだ?と首を傾げてしまう。
独善的に家族を支配する夫のせいでトラウマを持つセンシティブな妻が心を病んでいったというのはあり得なくはないけど、自然にも感じられなかったし。イライザのスペリング・コンテスト出場をキッカケに家庭が綻んでいく様も自然に描かれていたように思えない。あらすじは理解できるけどしっくりはこなかった。とはいえ、最後の最後に整合性を感じず拍子抜けしただけのことであって、途中はずっとミステリアスな展開を勝手に楽しんだのでよしとしよう。
ファンタジー描写の意図も後になっては意味不明。
人は神に近づこうとするよりもしっかり地に足をつけましょうー
綴り字のシーズン 公式サイト
BEE SEASON 2005 アメリカ/FOX
監督 スコット・マクギー、デヴィッド・シーゲル
原作 マイラ・ゴールドバーグ
出演 リチャード・ギア、ジュリエット・ビノシュ、フローラ・クロス
(日比谷シャンテ・シネ) 7本目

今年の最初の映画は、リチャード・ギアの「綴り字のシーズン(原題 Bee Season)。 触込みからいっても家族の物語だとはわかっていました。 しかし、何度も書きましたが、アメリカの映画には「家族の再生」が一、二を争うテーマなんだな。まあ人間のテーマだから当然ですが、多種多様ですね。 大学教授のソール(リチャード・ギア)は優秀な息子アーロン(マックス・ミンゲラ)と11歳のイライザ(フローラ・クロス)、そして妻ミリアム(ジュリエット・ビノシュ)と幸せな生活をおくっているように見えるが、父は...... more

注意:ネタばれ有りなので、これから観る予定の方は楽しみが損なわれることをご承知いただいた上で御覧下さい。 単語の綴りがこの映画の表向きなテーマとなっている様で、冒頭のキ... more

よく特殊な能力を持つヒトは言う。 「頭の中で声が聞こえて誰かが教えてくれる」 「目をつぶると声が聞こえてくるの。 そのうちその声が変って別の声になる。 言葉の声に。そして見えてくるの。言葉が」 少女イライザはこう言う。 なるほど、特殊な能力を持つヒトとはやはりこういうものなんだと納得。 スペリング・コンテストで素晴らしい能力を発揮するイライザ。 多分他の子供たちは一生懸命スペルを暗記してこの大会に臨むのだろう。 だがイライザは彼らとはまるで違う。 なにしろ知らない単...... more

単館系だし、女性向けの感動モノだと思っていた。小学生の女の子を視点に描いているが大人向け。 文学系ヒューマン・ドラマのようだし、宗教哲学も含まれたサイコものとも言える。主人公の少女は、言葉に含まれる様々な背景を感じ取りスペルを当てる事が出来る才能がある。...... more

幸せそうなナウマン家の人たち。大学教授の父ソール(リチャード・ギア)、研究室に勤める母ミリアム(ジュリエット・ビノシュ)、優秀な兄アーロン、そしておとなしい妹イライザ(フローラ・クロス) 父は優秀な兄につきっきりで、勉強やチェロの演奏を教えている。母は..... more

家族に葛藤があってこそ、家族に成りうると思う。 親は得てして子に完璧さを求めがちなのだろうか。 この作品に出てくる「ナウマン一家」は一見するととても理想的な家族。父は宗教学の大学教授ソール。母は科学者ミリアム。優秀な兄アーロン。そして妹のイライザ。イライザが校内スペリングコンテストで優勝してから、アーロンに向けられていた父の視線はイライザに向けられる。 イライザに言葉に対する類まれなる才能を見出していき、通常のレベル以上の期待をし、ユダヤ教の神秘思想‘カパラ’主義「口承の秘儀」を見て取る。(う~ん...... more

「Bee Season」2005 USA 主演イライザ役はこの作品で長編デビューを飾ったフローラ・クロス。イライザの両親をリチャード・ギア(Shall We Dance/2004)とジュリエット・ビノシュ(シェフと素顔と美味しい時間/2002)が演じている。他、兄アーロンにマックス・ミンゲラ、彼はアンソニー・ミンゲラ(イングリッシュ・ペイシェント/1996/監督)の息子。ケヴィン・スペイシー主演の「ビヨンド・ザ・シー/夢見るように歌えば」でサンドラ・ディ役を演じたケイト・ボスワースがアーロンと知り合...... more


[ 綴り字のシーズン ]@日比谷シャンテ・シネで鑑賞。 この映画だけチケットが無料で3枚も入手できたのだが、 一緒に観に行く人もなく一人で2回も観てしまった。 [ 綴り字のシーズン ]の原題は[ Bee Season ]。アメ リカで15歳以下の子供対象に行われるスペリング・コンテ スト(spelling bee/スペリング・ビー)が舞台になってい る。2004年には、日本でもこの大会を題材にした映画 [ チャレンジ・キッズ/未来を架ける子どもたち ]が上 映された。観たかった...... more

今年一番最初に鑑賞した映画です。 なのに、感想が書けずにいました。 年の初めにぴったりの、良くあるハートウォーミングな家族映画だと思って観に行ったら(ギア様好きだし)、ちょっと一発食らった感じですっかりしょげてしまい・・なかなか頭の中で纏まらなかったのです..... more

文字どおり 文字が乱舞の 世の中よ リチャード・ギアとジュリエット・ビノシュが夫婦役とは、こりゃ意外なり。 それにしても、ジュリエット・ビノシュ、老けましたねえ(失礼)。そうかあ、トリコロール以来、私は彼女とお会いしていない。あれから随分年月も経ちま... more

こないだ見た映画です。 こういうのって、必ず「ネタバレ注意」とか断るのがお約束になっていますが、公開前の話題だとか、公式サイトとかじゃない限り、大抵ネタバレなんですよね。 ついでに、「とりとめなし注意」でもありますよ。 後は「続きを読む」からどうぞ。 映画自体の予備知識はなくリチャード・ギア出演のアメリカ映画、ということで少々先入観があったせいもあってか、なかなか設定というかストーリーが理解できないもどかしさがありました。 スペリングに特異な才能をもった女の子、イライザが主人公で、その母親をジュ...... more


言葉の発生の遥かな起源に、 少女は巫女のように入り込む。 全米でベストセラーとなった女流小説家マイラ・ゴールドバーグの原作。日本では馴染みのない「スペリング・コンテスト」を舞台にしているが、本当に描きたかったのは「家庭崩壊の物語」でもある。 宗教学者ソール(リチャード・ギア)は、家族の中で、絶対権威のように振舞っている。息子エアロン(マックス・ミンゲラ)は、両親の期待を背負った「進学組み」だ。ヘブライ語にギターと、ソールはなにかと、エアロンの面倒を見る。 イライザ(フローラ・クロス)はあまり構って...... more

「綴り字のシーズン」 監督 スコット・マクギー 北カリフォルニアに住むナウマン家の人々は理想的な家族のように見えた。大学で教鞭をとる宗教学者の父ソール、科学者の母ミリアム、学業優秀な兄アーロンと妹のイライザ。パワフルでカリスマ性に満ちたソールは輝く太陽...... more



原題:Bee Season 思春期を思い悩むことなく、何事もなく過ごした人、思い出したくない過去を何も背負っていない人なんて、いったい何処にいるだろうか・・家族再生の物語・・ イライザ・ナウマン(フローラ・クロス)は、スペルが自然と頭に浮かぶ不思議な能力を持つ11歳... more
>人は神に近づこうとするよりもしっかり地に足をつけましょうー
そうですよねー。母親はとくになんだか過去を子供にまでぶつけちゃっていかがなものかと・・
雰囲気とかは、引き込まれたのですが
「どうしてだろう」が解決しなくって。。。
TBありがとうございました。
スペリング・コンテストの不公平さは確かにありますよね。
でも運も実力のうち!ってヤツかもしれませんよ~。
それにしても最後のあの単語、津波同様すっかり英語として
定着しているんですねぇ。
結構わからない、もやっとした部分から抜け切れないところがありますよね。一体なんだったんだ…って思うところたくさんありました(苦笑)
日本語が簡単に思えてきましたわ(^^ゞ
ビノシュ母は最も謎めいていましたよねぇ。
母親として正しく子どもの前で振る舞えないほどに心が病んでいたんだろうなぁとは思えるんですが、その理由も何だかよくわかりませんでしたねぇぇ。
解決しませんよね。おもしろかったんですけど、ヘンさが拭えず・・・。
スペリングはカンペキなんだけど上がり症っていう子どもも
いると思うので、このスタイルには私はどうも反対なんですが(笑)
やっぱりこれがアメリカなんでしょうねぇ。成功が見えることが大事?
そして、きっと、運も実力のうちなんでしょうねー。
あの単語はやや難しい単語という位置づけなのがおもしろいですよね。
サムライとかカラオケとかはどうなんでしょうー。

家族みんな、違った方向に向っていくので面白かったんですけど、ハテナマークも一緒に付いてくるカンジでした。
ビノッシュ母の暴走は、本当にビックリです!
最後はどのような着地を迎えるのか心配になりましたが、なるほどキャッチコピーの「少女は、たった一文字で家族を救う」ラストでした。
ですよねぇー。私だけじゃなくて安心しました。
製作者の意図が知りたくなったんですが、本作のインタビュー等
関連記事はネット上には全然見当たらないんですよね。
パンフを買いたくなるほどに、気に入った映画でもないし・・・。
全体像はともかく、言葉の神秘的な魅力へのアプローチはよかったです。
スペルを憶えるのはとても苦手なので、日本語に感謝。
ハテナマークは付いてきますよねぇぇ。
不可解さをあえてねらったのならいいんですけど、
原作もあるということは背景や彼らの心情の流れは
本当はきちんと書かれているんですよね?
だとしたら、その脚本と演出は不十分じゃないのかと思わずにはいられません・・・。
原作ではこの母親はもともと情緒の安定に問題を抱えていたらしいです。突然、あんな奇行に走りはじめたわけでもないらしい。確かに、コンテストを機に夫へのストレスだけで入院に至るのは非現実的過ぎるので納得できますが、映画ではそのへんが描かれていなかったような・・・。
コピーのことは後で知り、私もなるほど実に的を射たコピーだなぁと思いました。あれで本当に救われたのかもよくわからなかったけど・・・。
私も原作が気になってます~~結末が違うらしいですね・・
「高慢~」みたいに「2時間に纏めたらこうなりました」みたいな感じで、原作の方はきちんとそれぞれの登場人物の心の軌跡が描かれているのでしょうかね^^; 映画を観る限りでは皆さんおっしゃるように「?」が残る作品でした。
結末は違うんですかー?
まぁ確かに、コンテストの決勝戦場面でエンディングというのはいかにも映画ならではなカンジでしたよねぇ。
原作は興味があるのですが、謎の部分を確かめたいというだけで、「ドア・イン・ザ・フロア」のようにちゃんと読んでみたいと思ったわけでもないんですよねぇ。^^; ビノシュママの不可解さの裏には、ドアインザフロア的なトラウマが隠されているのかと思いきや、そんな描写もなくて拍子抜け。
ギアパパはやっぱりいいパパだと思います。というわけでどうしてもしっくりこないので放棄しますー。
ビノシュママは両親を交通事故で亡くしたといってませんでしたっけ?少女時代のフラッシュバックのような場面はその現場を目撃してしまったことのトラウマを示しているのではないでしょうか。
ギア演じる父親はただ自信過剰で少々押しつけがましく、そのことにまったく無自覚だというだけで、いい人なんだけど、何の挫折もなく育ってきたようなとこがあって、結果的に家族を苦しめてしまっているだけ、というとこなんでしょう。
ラストは、父親は混乱しがっくりうなだれて、娘の健闘を祝福する余裕もない、という感じでしたし、ハッピーエンドというよりは、あくまで再生へのきっかけに過ぎないもの、と理解しました。
父親を軽く凌駕するスーパーナチュラルな才能を持つがゆえに、イライザは父のソフトながらも完璧指向的な支配力を軽やかに振り払ってみせることができた、ということかな。
全編にわたって、過剰な感情移入を拒否するようなストーリーや描写の控えめさが、かえってふくらみを与えている佳作だと思いました。
原作読んでないんですが、興味ありますね。
だいたい長編の映画化だと本のほうが良かったりするし。
はじめまして。解説ありがとうございます。
フラッシュバックは両親の交通事故でしたね。事故が彼女のトラウマなのは物語が進むつれてわかってきました。それはわかるし、ギア扮する非の打ち所のないパパの存在がビノシュママの心労になっていたのもわかるんですよ。でも、それプラスそれが原因で、コレクションの奇行に走るほど病的なものになったのが私にはしっくりこなかったんです。ずっと病んでいながらもそれまでは家族に不審がられることもなく、コンテスト絡みの家族のひび割れによって、病状が悪化したというのがご都合主義に感じてしまったり・・。
ギアパパのようなタイプは厄介だとは思うけど、そんな人だと知っていて結婚したんじゃないの?とか。話せばわかってくれる人じゃないの?とか。ちょっとしたことが不自然に感じられたのですよ・・。
ストーリーを好意的に解釈することは可能なんですが、観ている最中に心揺さぶられませんでした。興味深い映画ではあったけど好きなタイプじゃなかったです。ごめんなさい。
"描写の控えめさがふくらみを与える"ような映画は大好きなんですけどね。
SHOJI さんは「佳作」と感じられるほど楽しめたようで何よりです。